保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】医療保険関連法成立に抗議する

公開日 2019年06月20日

 マイナンバーカードの保険証利用を可能にする「医療保険関連法(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律)」が衆議院での約10時間の審議の後、参議院でこの5月に成立した(下表)。

 この法律の主要なポイントは次の3点である。①保険証だけでなくマイナンバーカードを使用しオンラインでの資格確認ができるようにする。②医療レセプトと特定健診結果から作られたナショナルデータベース(NDB)や介護レセプトデータなどの連結解析を可能にし、高齢者の保健事業と予防事業の一体的な実施を目指し、さらに研究機関や民間業者にデータ提供を可能にする。③電子カルテの普及、標準化を支援する。

 この法律は国民にあまり知られていないが、施行されるとわれわれ医療機関だけでなく国民全体に大きな影響が及ぶと考えられる。それは以下の理由からだ。

 このシステムについて、「マイナンバーカードの電子証明書を使うだけでマイナンバーを使うわけではない、また医療情報も被保険者番号で集めるのでマイナンバーとは結び付かない」という説明も聞かれるが、本当にそうだろうか?

 このシステムの前提として、被保険者番号を個人単位化しマイナンバーと1対1でセットにして登録することになっている。また、利点として、高額療養費の限度額認定証発行等の大幅な削減が挙げられているが、これは保険証資格と住民税情報を連結することを意味するし、さらには医療費控除の申請が不要になることは税金情報との連結を意味する。これらの連結がマイナンバーの介在によって初めて可能になることは誰の目にも明らかである。

 一方、医療情報を集積し、各種データベースを連結、解析することはどうだろうか?個人単位化された被保険者番号を識別番号として使うとのことだが、会社が変われば被保険者番号も別の番号になるわけで、連続的な情報の集積ができるとするならばそれは被保険者番号とセットになったマイナンバーが介在してのことであることは自明であろう。

 以上から、このシステムはマイナンバーそのものの上に成り立っていることがわかる。それはすなわち医療情報をマイナンバーで扱うことを意味するわけである。いつ、そんな合意ができたのであろうか?

 従来から、医療情報は機微に富むため、いったん漏れた場合や、他の情報と連結された際に使い方によっては個人に多大な被害が及ぶ危険性が指摘されており、そのためマイナンバー制度では医療情報を扱わないことになっていたはずである。この法律はこれまでの合意事項を根底から覆すものである。

 さらに、保険証資格確認の回線を使用しカルテの内容をセンターが自動的に収集できるシステムが構想されており、③の電子カルテの標準化の支援は、その布石とも考えられる。

 以上のように国民に重大な影響を及ぼしかねない法律が国会での短時間の審議で成立したことは驚愕に値する。拙速な施行はせず、もう一度医療界を始め、広く国民の間で議論することが必要であると考える。
 


  ◆医療保険関連法の主な内容と実施時期

  ・オンライン資格確認の導入(2021年3月)
  ・オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設(2019年10月)
  ・NDB、介護DB等の連結解析等(2020年10月)
  ・高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施(2020年4月)
  ・ 被用者保険の被扶養者に関する国内居住要件の原則化(2020年4月)
  ・審査支払機関の機能の強化=支払基金改革(2021年4月に基金支部の廃止)
  ・その他

 

(『東京保険医新聞』2019年6月15日号掲載)