保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】景気動向が「悪化」する中での消費税増税は中止すべき

公開日 2019年06月28日

 これまで2回行なわれた消費税増税は、いずれも景気を「好景気」「回復期」と判断した時期に実施されていた。しかし、3月の景気動向指数の基調判断は「悪化」の局面であり、消費税増税は無謀と言える。

 4月の消費動向調査では消費者心理の明るさを示す消費者態度指数が7カ月連続で悪化している。主因は耐久消費財の購入意欲の後退である。

 3月の毎月勤労統計調査によると、名目賃金の現金給与総額は前年同月に比べ1・9%減であった。名目賃金の減少に加え、物価上昇が追い討ちをかけている。物価変動の影響を除いた実質賃金はさらに目減りし、2・5%減となっている。実質賃金の減少は3カ月連続となっている。

 3月の日銀短観では大企業製造業業況判断指数(DI)が、前回調査(昨年12月)から7ポイント低下し、第2次安倍政権発足後最大の悪化だ。帝国データバンクが発表した4月の景気動向調査では企業の景況感は、5カ月連続で悪化。

 民間シンクタンクのみずほ総研は5月7日に発表した「雇用・賃金からみた2019年の日本経済」で、「雇用者所得は、賃金の減速を主因に力強さに欠ける」と述べている。所得が伸び悩めば個人消費も停滞し、日本経済が低迷するのは明らかである。

 また、金融庁が6月3日公表した報告書で、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要との試算を示したが、増税する一方で国民に蓄財を求める政策は相矛盾するものである。

消費税の真の目的は法人税の穴埋め

 政府は、消費税は社会保障財源に使われると喧伝してきた。しかし、患者窓口負担の引き上げは連続して行われてきた。1990年度と2018年度の税収を比較すると、消費税は13兆円増加する一方、所得税と法人税は合わせて13・2兆円減少している。安倍首相は今回の消費税10%への増税分は幼児教育の無償化等に使うと言っているが、果たしてそうだろうか。法人税減税の穴埋めとして、消費税増税が行われてきた。消費税の真の使途を冷静に見極めなければならない。

矛盾だらけの増税

 今回の消費税増税は飲食料品の税率を8%に据え置くため、複数税率となる。また、消費税増税に対する景気対策としてポイント還元が導入される。事業規模により還元率が変わり、軽減税率も含むと税率はなんと3%、5%、6%、8%、10%の5類に及ぶ。政府は増税後の負担感を軽減するため、各メーカーに導入前からの値上げを求めている有様である。

 そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重くなり、憲法が定める税の応能負担原則に違反する。これ以上の消費税増税は低所得者の生活を苦しくし、受診抑制にもつながる。社会保障の充実とは逆行するものだ。

増税で医療機関の損税はますます過大に

 保険医療が消費税非課税であるため医療機関は仕入れにかかった消費税を控除できず「損税」として負担し続けている。診療報酬に上乗せしたというが、マイナス改定が続き実際は補填されていない。今回も10月の改定で基本診療料に上乗せするというが、協会がある内科診療所の決算書を基に試算したところ、上乗せ分よりも損税の増加幅が大きく、2%増税分に対する補填率は5割程度に過ぎなかった(東京保険医新聞5月5・15日合併号参照)。設備投資の大きい病院ではまさに死活問題である。

 夏の参議院選挙を控え、与党内でも「増税中止」をにおわせる発言が出ている。消費税増税の真の狙いは何であるか。我々は参議院選挙での各党の公約と実際にこれまで行ってきた政策の両方を見極めて票を投じることが必要だ。

(『東京保険医新聞』2019年6月25日号掲載)