保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】2019年協会活動を振り返る

公開日 2019年12月26日

医療・介護・福祉などの社会保障を守る活動

 安倍内閣の特徴は、嘘と言い逃れと責任転嫁が多く、言葉の意味を変えて国民に誤解を与える点にある。「社会保障・税の一体改革」とは、二つの一体的な改善ではなく、同時進行的な改悪であった。「アベノミクス」の標語は夢がありそうだったが、もはや使われていない。幻惑させる標語の陰では、強い者や総理のお友達を優遇し一般の国民を蔑ろにしている。「自助・自立」を掲げた2013年度以降、社会保障費は4・27兆円も削減され、自立できない人が切り捨てられた。今後は「全世代型社会保障改革」の標語の下、全世代を圧迫する社会保障費の削減が計画されており、協会は抗議していく。

 介護保険法が改定され、要支援者のための介護予防・通所介護サービスは、区市町村が行う総合事業に移管されたが、今後は要介護1・2のサービスも、介護保険から切り離されてゆく。国が進める「地域包括診療」は、患者を在宅化させて病床を削減し、医療費の低減をはかる政策である。しかし在宅化した患者の介護サービスは急速に削減されており、患者は孤立して孤独死が増加している。日本は医師が10万人不足し、看護職員が27万人不足しているとされている。人材不足の下で在宅化を進めれば、医療と介護の切り捨てとなることを監視してゆく。

 後発医薬品使用の強制は、循環器疾患・内分泌疾患など、微量な薬剤が大きな作用を示す場合に、効果が不安定になる危険がある。

 自然災害に対しては、ボランティアへの破傷風ワクチンの無料接種をおこなった。被災地の保険医協会には、活動資金を支出するなどの支援をおこなった。

 東京五輪に対しては、MRワクチン接種の必要性を指摘した。

 マイナンバーの危険性を指摘する活動をおこなった。中国は通信技術大国をめざしており、監視カメラ・顔認証システム、通信傍受システムなどを駆使して監視社会化が進んでいる。日本のマイナンバーも国民監視につながる可能性がある。マイナンバーカードの普及率は13・5%と低迷しているが、健康保険証と結合すれば、医療情報の漏洩を招く恐れがある。

 協会は保険医の立場から、東京都福祉保健局に対して多岐にわたる要望を毎年伝えてきた。公務員の立場上、形式的な回答もやむを得ないことではあるが、最近は協会の意向を汲む傾向が見られ、要請を継続する大切さが感じられる。しかし、低所得の加入者が多い国保料の軽減については、自助を強調する政府の方針に従う国保運営協議会の、強固な壁が感じられる。

 「慢性疲労症候群」については、「筋痛性脳脊髄炎」という一つの独立した疾患であるという研究報告が周知されてきた。患者会の活動を引き続き支援した。

 戦争は最大最悪の人権侵害であり、当協会は戦争に繋がることには慎重な意見を表明してきた。特に核兵器についてはその非人道性を訴えて、核兵器廃絶を目指す運動を支援した。

 消費税が増税されるたびに法人税が減税され、社会保障予算はかえって削減されて、国民所得は減少してゆく。その一方では、大企業の内部留保が膨張を続けている。消費税損税の問題は、診療報酬では解決できず、協会は消費税の還付を可能にする「ゼロ税率」の適用を求めている。

 アスベストを使用した建築物が老朽化して取り壊しが始まっており、今後もアスベストによる健康被害が続くことに警鐘を鳴らした。

会員の利益と経営を守る活動 医療研究会も活発に開催

 保険請求に関する相談、情報伝達、講習会の開催などを行った。

 厚生局が行う指導・監査について、強権的なものにならないように監視・要請を続け、会員には協会への相談を呼びかけて、弁護士の紹介もおこない、機動的な対応をおこなった。

 医院経営については各種セミナー、個別相談会、共済制度の紹介等をおこなった。保険医サポートセンターは、税理士、社会保険労務士、行政書士、建築士などの専門家を紹介し、あらゆる相談に対応した。

 医療事故調査制度に関しては、誤った運用や報告が冤罪を生まないように、医療安全のための監視・懇談・啓発をおこなった。

 「地域医療構想」は、病床を削減することによって患者を在宅化させ、医療費を削減する計画である。在宅者の介護費用も、水準の低下と範囲の縮小が狙われている。2019年9月、厚労省は424の公立・公的病院の実名を挙げて再編統合を迫ったが、急性期病床の削減が進まないことへの焦りがあると受け取られた。地域に欠かせない病院が多数含まれており、強引なやり方には大きな反発が広がった。机上の計算だけから現場をいじるのは、本末転倒である。

 医療研究会活動は、会員の要望を取り入れて、多科領域で多種多彩なテーマを扱った。

組織の拡大と活性化 会報紙誌で情報提供

 会員や医療関係者による入会の紹介、事務局による熱心な戸別訪問、ホームページの閲覧などにより、会員数は着実に増加している。支部の活動を支援するとともに、勤務医との連携を重視し、大学や市中病院に対しても広報をおこない、紹介講師の派遣もおこなった。保団連を中心とする全国の保険医協会・医会と連携し、活動に参加した。

 東京保険医新聞と「診療研究」誌は、正確迅速な情報提供をおこない、分かりやすく親しみやすい紙誌面作りに努力した。

 協会の財政状況は毎月の理事会で報告され、長期安定した財政運営を図るように、公正を旨として取り組まれている。

(『東京保険医新聞』2019年12月25日号掲載)