【主張】今次診療報酬改定を読む

公開日 2020年03月13日

 2020年度診療報酬改定では、入院は「医療機能の分化・強化、連携」、外来は「かかりつけ医機能」を推し進めた前回改定をより強固にする内容となった。また、全体的に細かな部分での改定が行われ、施設基準の変更や医師以外の職種に対する評価等が新設された。

 入院機能の部分では、入院基本料、特定入院料は据え置かれ、短期滞在手術等入院基本料3はすべて引き下げられた。急性期病床削減の観点から、急性期一般入院基本料に係る重症度、医療・看護必要度の基準が引き上げられ、現状の入院料を維持するにはより重症度の高い患者を受け入れざるをえなくなった。さらに、該当患者の判定基準が変更され、施設基準の維持が困難になることが予想される。

 一方、「働き方改革の推進」として医師事務作業補助体制加算などが引き上げられたことは評価できる。しかし、OECD加盟国の中でも最低レベルの医師不足にメスを入れなければ、抜本的解決にはならない。

 「かかりつけ医機能の強化」としては、前回改定で新設された機能強化加算の施設基準に新たな事項の追加、小児科外来診療料の届出化、地域包括診療加算の要件緩和などが行われた。

 また、かかりつけ医から紹介された患者の情報提供を行った場合に算定できる診療情報提供料(Ⅲ)(150点)が新設され、さらにかかりつけ医機能を重視していく方針が示された。

 前回改定で、電話再診と同時に診療情報提供料(Ⅰ)が算定できない扱いになっていたが、休日・夜間の救急医療機関への受診を指示した上で算定できるように変更されたことは、協会の要望に沿った内容ではあるが、実際の運用については通知を注視したい。

 「オンライン診療」の拡充として、オンラインへの移行に必要な事前の対面診療の期間が6カ月から3カ月に短縮された上、対象患者も拡大された。十分な検討がされないままオンラインへの移行を推進することは医療の質の低下にもつながりかねない。対面診療重視の立場からすれば、安易にオンライン診療の拡充が実施されないよう引き続き注視する必要がある。

 在宅医療では、前回のような大きな取り扱いの変更はないが、在宅療養指導管理料(自己注射など)の加算新設や、変更が盛り込まれた。また、超音波検査に訪問診療時の点数が新設され、部位によっては現行点数よりも低くなり、さらに「部位にかかわらず月1回のみ算定」と制限された。装置の小型化をもって過小評価するべきではない。

 検査は汎用点数が引き下げられ、遺伝子検査が新設された。投薬、注射も一部項目のわずかな引き上げに留まっている。処置、手術では、関節穿刺や皮膚切開術等の算定頻度の高い項目が引き上げられた。

 しかし、医療機関の経営を支える初再診料そのものの引き上げがなければ、医療機関の経営改善、医療の質の向上を図ることは難しい。協会は今後も基本診療料の拡充を求めていく。

 今回の改定では、多職種との連携が新設されるなど、医業の分化と連携強化の促進が図られている。医師の負担を減らすことは重要だが、医療の質を低下させることのないよう、今後監視を強める必要がある。

 公的病院の再編統合、大病院受診時の定額負担など、国民の受診抑制になる政策には断固として抗議していく。

(『東京保険医新聞』2020年3月5日号掲載)