【要望書】適正なPCR検査推進等に関する要望書

公開日 2020年04月24日

2020年4月20日

東京都知事 
 小池 百合子 殿 

一般社団法人 東京都保険医協会
代表理事 須田 昭夫

適正なPCR検査推進等に関する要望書

はじめに

 日本国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者については、当初の目標であったクラスターの解明が困難となり、首都東京での急増も相まって4月7日に緊急事態宣言が発せられました。本邦では人口に対する集中治療室数・人工呼吸器数が先進諸国で最も少なく、感染者急増にともなう重症者の増加は病院医療の崩壊を確実に招きます。

 現段階では、当初は一般医療施設からの患者さんのPCR検査適応判断や入院仲介などを一手に引き受けて尽力されていた保健所職員の方々も疲弊され、PCR検査待ちの患者さんが多数におよび、機能不全に陥ってきていると危惧しております。

 また、患者数増加に対し、初診電話診療や初診オンライン診療がスタートしましたが、早急に軌道にのせる必要があります。すなわち、かかりつけ医や一般の診療所の医師は、COVID-19疑いの患者さんの直接診察を回避させるだけでなく、初診電話診療などを駆使する形によって一般診療所などの医師もCOVID-19診療に参加し、かかりつけ医本来の診療形態を生かすことによって、医療崩壊を回避しなくてはなりません。

 私たちは、振り分け機能、検査機能、入院機能、かかりつけ医の機能を明確にすることによって、各医療機関の維持と崩壊防止目で、以下の4点を要望いたします。

要望趣旨

1. COVID-19疑い患者は、診療所などの直接受診を避け、「初診電話診療」「初診オンライン診療」を活用することを推進させて、かかりつけ医による振り分け機能が早急に有効活用されるよう指導してください。
2.各地域に、かかりつけ医などが直接依頼できる感染予防対策が確立した「PCR検査センター」を設置してください。
3.病床維持のために充分な隔離宿泊施設・専門病院を早急に完備してください。
4.東京都で一括した発症患者の把握と円滑な診療のために、初診から診断、振り分け、検査、宿泊施設療養(自宅療養)、入院に至るフローを作成してください。

要望理由(目的及び詳細)

1.「初診電話診療」「初診オンライン診療」の推進

(1)初診電話診療などの認知度向上

 初診電話診療や初診オンライン診療(初診電話診療など)の保険診療が時限的に認められました。しかし現段階では、一般診療所などでの認知度は低く、あまり活用されていません。

 発熱、風邪症状などのCOVID-19疑い患者さんが来院されると、リスクが高い慢性疾患患者や高齢者らから物理的に分離することが不可能な施設がほとんどで、安全性の高い感染防御は困難です。

 これに対して、事前に電話連絡のない患者さんには、改めて院外から携帯電話等で話しをしてもらうことにして、初診電話診療などを活用すれば、感染拡大を回避できます。

 このことを、東京都の医療施設に広めていただきたいと存じます。

(2)診療報酬減少からの脱却

 現在、多くの一般の診療所では患者の受診控えがあり、診療報酬が前年よりも大きく落ち込んでいます。その原因はいくつかありますが、主に受診のために診療所内に入りCOVID-19に罹患した別の患者さんと密室内で濃厚接触する危険性を回避したいという患者側の懸念と、発熱、風邪症状の患者さんの直接対面診療を忌避して、患者さんご本人に保健所への相談システムを薦めている医療側のリスクマネージメントの現状があります。これを拒否せずに初診電話診療などにより積極的にCOVID-19診療に参加すれば、診療報酬の回復も望めます。

2.地域における「PCR検査センター」の設置

(1)「PCR検査センター」設置の目的

 保健所における振り分け機能や医療機関で行っている発熱外来でのPCR検体採取を補助し、保健所や医療機関の負担を軽減することを目的とします。

 患者さんから直接保健所に電話をするだけでなく、かかりつけ医などの医療機関が初診電話診療などをおこない、その担当医師が必要と認めた場合に、PCR検査を確実に施行できるシステムが必要となっているからです。

(2)「PCR検査センター」設置の場所

 地区医師会または2次医療圏に数カ所程度が適当です。

(3)設置主体

新型インフルエンザ等対策特別措置法49条を考慮すれば、都(道府県)知事名によって、実際の設置運営は市区町村が行うことが適切と存じます。

(4)具体的な設置方法

 広い土地を有する医療機関の中庭や市区町村などが所有する運動場や施設など広い駐車場などに、四方が開放可能な大型テントを使用します。法律が許す範囲で可能であればドライブスルー方式採用する方法も採用します。それらが、不可能であれば、ウォーキングスルー方式が可能な陰圧ボックスの設置が適切と存じます。

(5)「PCR検査センター」診療内容

 患者登録、診察は、事前の初診電話外来などの際におこない、検体採取、検査結果がでるまでの療養方法説明をPCR検査センターが行うシステムが適切と存じます。

 検体採取は、東京都福祉保健局の推奨する「個人防護具の着脱手順書」に準ずることが安全面で重要です。

 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/iryo/kansen/shingatainflu/cyakudatsu.html

(6)PCR検査結果報告

 陽性の場合、「PCR検査センター」は各地域保健所と連携し、直接被験者およびPCRを依頼した医師に連絡します。陰性の場合は、依頼した医師に連絡し、当該医師が患者への結果報告を行うべきです。

(7)陽性結果被験者の振り分け

 各地域保健所と連携をとりながらPCR検査を依頼した医師が自宅待機の指示や入院する病院への診療情報提供書を書きます。なお、今後、隔離宿泊施設への直接入所が可能になった場合も、依頼した医師が診療情報提供書を書くべきと思います。

3.病床維持のための隔離宿泊施設・専門病院の早急な完備

 現在、東京都が計画している通りに隔離宿泊施設の10000床を目指し確保、設営、建設を早急に行うべきです。また、COVID-19患者と一般患者の区分不能で機能不全に陥っている、指定感染症病院の一部や、大阪市の市立十三市民病院のように、公的病院などを時限的にコロナ専用病院に転換して完備することを望みます。

東京都の初診から宿泊施設療養(自宅療養)、入院に至るフロー作成(参考案添付)

(1)受診フローの作成案解説

 第一段階 ①かかりつけ医の初診電話外来(オンライン診療)、②絶対に直接の診察が必要な場合だけ通常の外来を直接受診する。

 第二段階 ①②からa PCR検査センター b.保健所 c.発熱外来(病院)のいずれかに連絡、紹介、申し込みを行う。

 第三段階 a.b.cからア自宅待機 イ隔離宿泊施設 ウ感染症指定病院などの病院 を紹介する。

(2)フローの補足

 現段階においては、PCR検査陽性で多数をしめる軽症入院患者および自宅療養患者は、基本的にホテルなどの隔離宿泊施設に移動させるべきです。その上で、新規のPCR陽性患者も検査を依頼した、かかりつけ医師が、自宅待機、宿泊施設への入所、入院などの指示を行うことが理想的です。

 

備考:新型インフルエンザ等対策特別措置法

第四十九条 特定都道府県知事は、当該特定都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に当たり、臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資(以下この条及び第七十二条第一項において「土地等」という。)を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。
2 前項の場合において土地等の所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしないとき、又は土地等の所有者若しくは占有者の所在が不明であるため同項の同意を求めることができないときは、特定都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、同項の規定にかかわらず、同意を得ないで、当該土地等を使用することができる。

以 上

適正なPCR検査推進等に関する要望書[PDF:5MB]