保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

[主張]オンライン資格確認 考えられる問題点

公開日 2020年09月14日

◆マイナンバーカードを用いたオンライン資格確認

 保険証のオンライン資格確認が2021年3月に開始される予定である。医療機関の窓口や受付でマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーにかざして医療保険の資格確認を行うものだ。

 国は、全国22万件の医療機関・薬局に、顔認証付きカードリーダーを無償で提供し、オンライン資格確認に必要なシステム整備費(診療所の上限:32万1000円)を補助するとしている。なお、カードリーダーを提供された後に、オンライン資格確認を導入しなかった場合、費用相当額(約10万円)を返還する必要がある。

 マイナンバーカードの普及状況は、2020年7月1日現在、交付枚数2225万枚、普及率17・5%で、国民の大多数は同カードを持っていないのが現状だ。

 政府は、2022年度中に全国民が同カードを保有することを想定している。政府の思惑に反し伸び悩むマイナンバーカードの普及率だが、その普及の手段として政府は、現在8700万枚発行されている保険証の機能を同カードに持たせようとしている。

 マイナンバーカードを用いてオンライン資格確認を行う際、どのような問題点が考えられるだろうか。

1 顔認証付きカードリーダー設置のためには、レセプトオンライン請求用などの独立したインターネット回線の開通、資格確認用のパソコンの用意などが新たに必要となる。

2 資格確認のためのインターネット回線が常時外部とつながることになり、ウイルス侵入等セキュリティ上の問題が懸念される。

3 オンライン資格確認にはデータセンターとの通信が必要であり、また顔認証作業、機器の操作も加わるため、従来の保険証の目視確認より長い時間がかかることが考えられる。窓口の混乱が生じる懸念がある。

4 マイナンバーカードは、保険証やキャッシュカードのように患者から預かって処理することが禁止されているため、顔認証付きカードリーダーは患者本人が操作することになる。しかし、操作に不慣れな高齢の患者などマイナンバーカードの読み取りがうまくいかない場合、従業員が患者に代わってカードをかざす場面も想定される。すべての患者が医療機関職員の手を借りずに操作ができる訳ではない。カードを預かることになれば、カードの取り違え、紛失等の問題が生じることも懸念される。

5 マイナンバーカードを保険証として活用するにあたって、審査支払機関が患者個人の被保険者情報、受診歴や薬剤情報、特定健診情報などを一元管理することになるが、カードの紛失やサーバーのハッキングなどによる機微情報漏洩の危険性があり、個人情報が悪用される危険性もある。

6 さらに、顔認証の際マスクを外すことも想定され、これは院内での感染防止に反する。

◆マイナンバーカードは顔認証普及の切り札

 オンライン資格確認の背景には「顔認証システム」の普及への思惑が深く関わっている。顔認証は、カードリーダーのカメラ機能でカード持参者の顔を撮影し、マイナンバーカード内部に格納された写真データと比較識別する。全国の医療機関を舞台に、この顔認証システムの普及が図られようとしている。

 政府は、マイナンバーやマイナンバーと結びついた被保険者番号を使い、健診結果や予防接種歴他各種医療情報を集積・連結・利用することを計画しており、一部は既に実行されている。

 保険証のオンライン資格確認システムを通じ、連結された電子システムやレセコンから直接情報を集めてデータベースを作り、そこから得られた情報をビッグデータとして各種研究機関や民間企業に提供することも計画されている。生命保険協会や私的保険会社がビッグデータ活用に名乗りを上げている。

 このような医療情報の利用については、患者のプライバシー保護や医師の守秘義務との観点から問題があると考えられるが、十分な検討がなされないまま、前のめりに進められているのが現状だ。

◆今後も保険証での資格確認は可能

 マイナンバーカードの取得は義務付けられておらず、総務省も「取得の強要は妥当ではない」としている。オンライン資格確認は義務ではなく、カードリーダーを設置した場合でも、引き続き保険証を用いた資格確認も認められている。資格確認の基本は、保険証で行われるべきである。患者には、「従来通り、保険証で資格確認ができる」ことを訴えたい。

(『東京保険医新聞』2020年9月5日号掲載)