[主張]保険証一枚で受診できる 国民皆保険を守ろう

公開日 2021年02月13日

 3月からマイナンバーカードを用いた健康保険資格のオンライン確認が開始される予定だ。しかし、これには大きな問題がある。

マイナンバーカード普及策としてのオンライン資格確認

 医療機関で導入する場合、カードリーダーや受給者資格確認用パソコンなど、追加設備の購入や、電子カルテの改修などが必要になり、受付事務員への教育も必要になるなど、システム維持のためにさらに費用が嵩む等の負担が考えられる。また、インターネット接続のため院内システムが危険にさらされることとなる。

 その上、根本的な問題として、国民の医療を受ける権利や、情報の自己決定権(プライバシー権)が侵害される危険性も考えられる。

 自民党のデジタル社会推進本部は、2020年11月17日、「デジタル庁創設に向けた第一次提言」をまとめ、そのなかで「健康保険証の発行義務を緩和し、マイナンバーカードとの一体化を進め、将来的に健康保険証を廃止する。またその工程を明らかにする」と言及した。現在は、マイナンバーカードの取得は任意であるが、医療を受けるために国民はマイナンバーカードの取得を強制されかねない。

 菅義偉首相は、2022年度末までにほぼすべての国民にマイナンバーを取得させたいと表明した。他方で2021年1月1日時点のマイナンバーカードの交付率は全国で24・2%に留まっている。

 マイナンバーカードを取得すれば、医療情報、納税、社会保障費の納付と受給の履歴、家族関係等、あらゆる個人情報が紐づけられ、社会保障の削減に利用される可能性がある。

 2020年10月28日の社会保障審議会医療保険部会では、個人の金融資産の保有状況を医療保険の負担に反映させる議論が行われた。政府は、マイナンバーと預貯金口座の紐付けを目指している。

 国民の多くは政府による個人情報の管理に不安を抱いており、そのことが交付率の低さに繋がっているのではないだろうか。オンライン資格確認は、これらの問題を解決しないまま、マイナンバーカードを強引に普及させるために導入されようとしているのが実態だ。

国民皆保険を出しに使うな

 健康保険証1枚で医療機関を受診できる国民皆保険は、国民から信頼され、医療を社会化させた制度として定着している。国民の医療を受ける権利を人質に取って、マイナンバーカードの普及を図る政策は看過できない。協会は、健康保険証1枚で受診できる国民皆保険を国民とともに守り、さらに充実した制度にするために力を尽くしていく。

(『東京保険医新聞』2021年2月5日号掲載)