医科歯科連携研究会2020 「在宅」多職種連携で

公開日 2021年03月10日

参加した医師・歯科医師とパネリストの間で活発な意見交換が行われた(2月14日、セミナールーム)
 

 

 医科歯科連携委員会は2月14日、「在宅患者の口腔疾患とその対処法」をテーマに東京歯科協会および千葉協会と共催で「医科歯科連携研究会2020」を開催し、医師、歯科医師、コメディカル等、会場・Zoom合わせて102人が参加した。

口腔は全身の状態を反映 多職種連携の重要性

 はじめに、増田翼氏(ウィル訪問看護ステーション江戸川 看護師)が「在宅現場で見られる口腔トラブルとケアマネジメント」と題し、在宅患者における口腔トラブルの実態や原因、多職種連携のために必要なケアマネジメントのポイントを述べた。

 ①口腔内の状態は全身の状態をよく反映することから、口腔衛生が不良である原因について多職種でアセスメントを行い、問題点を共有した上でケアを行うこと、②多職種の専門性を理解し、互いの専門領域の力を発揮するとともに、自職種の専門領域に縛られず、利用者や家族のニーズに基づいてケアを行う重要性を強調した。

口腔乾燥症 原因に応じた対処を紹介

 次に、岩渕博史氏(神奈川歯科大学 大学院歯学研究科 准教授)が「口腔乾燥症の概念・為害作用と口腔乾燥症を有する要介護者の口腔管理」と題し、講演した。

 口腔乾燥症は、自覚的・他覚的な口腔の乾燥症状であると考えられる。唾液分泌量が減少すると、口腔内細菌の増加等により口腔衛生状態が悪化し、誤嚥性肺炎の増加につながる。また、上気道における免疫応答の低下による上気道炎の増加や逆流性食道炎の増加など、全身疾患や他臓器疾患にも影響が及ぶと指摘した。対処法として、口腔乾燥の原因に応じて保湿・加湿・含嗽薬を使い分けることを挙げた。

摂食・歩行ができた事例も

 川越正平氏(あおぞら診療所 院長)は「地域包括ケア時代における歯科への期待~医科と歯科の協働による在宅医療~」と題し、医師・歯科医師をはじめとした多職種によるケアの重要性を解説した。

 在宅医療における重要なテーマに、①肺炎予防・骨折予防、②食支援、③緩和ケアがある。誤嚥性肺炎や転倒・骨折等の急性疾患は、栄養の不足や偏り、口腔衛生の悪化等も含め、さまざまな因子が絡みあって生じる生活機能障害と捉えるべきだ。ゆえに、体重推移の把握やタンパク質の摂取量等も含め、身体機能および栄養状態の評価、口腔衛生の管理という3領域の一体的なケアが必要だ。

 あおぞら診療所では、在宅支援連携体制を構築する医療機関との定期的なカンファレンスにおいて、訪問歯科診療を行っている歯科医師を招いた症例研究会をこれまで複数回、実施した。そこでは、パーキンソン病で経鼻栄養補給を行っていた患者に、義歯治療・口腔ケア、摂食嚥下リハビリテーション、栄養ケアを包括的に実施したことで、摂食および歩行が可能になった事例も報告された。また、松戸市医師会では、かかりつけの医師と歯科医師が協同する2人主治医制を推奨するなど、多職種連携に取り組んでいると紹介した。

医科・歯科双方から垣根取り払う努力を

 中村洋一副会長が座長を務めた後半のパネルディスカッションでは、参加した医師、歯科医師からの質問に対し、パネリストが「連携全体が上手くいくように看護師からも積極的に働きかけを行っている」「症例検討は、臨床において実際に連携を行った歯科医師を招くことから始めたが、最近は歯科医師会からアナウンスしてもらうなど、医科・歯科双方から連携における垣根を取り払う努力を行っている」と応じる等、活発な意見交換が行われた。

(『東京保険医新聞』2021年3月5日号掲載)