東京保険医協会 第103回 定時総会決議

公開日 2021年03月29日

東京保険医協会 第103回 定時総会決議

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、わが国の感染症対策や社会保障政策における戦略的思考や展望の欠如が浮き彫りになりました。保健所と公立・公的病院は、従前からの社会保障削減政策によって弱体化し、今回のパンデミックという災害に対応しきれず、医療提供体制の崩壊の一因となりました。これを契機に改めて問題点を検証し、前向きな対策を講じることが急務です。

 私たちはすべての国民のいのちと健康を守るために国民皆保険を堅持し、人々が尊厳を保って幸せに暮らせる社会を実現すること、および保険医の生活と権利を守る活動をおこなっています。

 新型コロナによる死亡事例は高齢者が多い介護施設で顕著に発生しています。定期的なPCR検査を実施して感染を早期に発見し、入所者のいのちを守る仕組みの構築が喫緊の課題です。コロナ禍にあって多くの人々が、精神的にも経済的にも苦しい自粛生活を余儀なくされ、健康状態の悪化が見られます。国民が安心して医療を受けられる環境と患者・利用者負担の軽減が必要です。

 医療機関はコロナ禍の中で1年以上、地域医療の最前線で個別の対応を迫られてきました。多くの医療機関が諸費用の増加と減収に見舞われています。新興・再興感染症のパンデミックの中にあっても、国民に安全な医療を提供し続けるために、すべての医療機関が存続できる財政的支援を求めます。

 日本国憲法 第25条第2項は、「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の社会的責務を定めています。私たちは、国に対して、「公助」の責任を果たす社会保障政策に立ち戻ることを求め、第103回定時総会にあたり、以下の項目の実現を希求します。

一、新興・再興感染症のパンデミックに対し、責任を持って迅速に対応できる仕組みを構築するとともに、公衆衛生を担う保健所機能を強化すること。また、公立・公的病院を維持・拡充し、感染症、災害、救急、周産期、小児、難病、障がい者などの行政的医療の責任を果たすこと。
一、介護施設などで定期的なPCR検査を実施し、感染者を早期に発見し、医療につなげる仕組みを速やかに構築すること。
一、医療提供体制を担うすべての医療機関が存続できるよう、緊急の財政措置を講じること。
一、ワクチンの不足や供給停止が繰り返されるワクチン行政を見直し、供給、接種、補償に責任を持つこと。
一、国民健康保険制度に必要十分な国費を投入し、国保料の国庫負担割合を回復すること。また、後期高齢者の自己負担2割への引き上げなどの患者・利用者負担増を行わないこと。
一、マイナンバーカードによるオンライン資格確認は診療情報の漏洩につながるため断念し、マイナンバー制度に依存しない健康保険制度の維持を再確認すること。
一、東日本大震災から10年を迎えた今、原発から撤退し、再生可能エネルギーの利用を拡大すること。
一、国連で採択され、本年1月に発効した核兵器禁止条約を尊重する活動を進め、平和主義を貫くこと。

以上

2021年3月27日  東京保険医協会

2021年3月27日総会決議[PDF:197KB]

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