[意見書]政府と東京都は東京オリンピック・パラリンピックの中止をIOCに打診してください

公開日 2021年05月17日

2021年5月14日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿

東京五輪担当大臣 丸川 珠代 殿

東京都知事 小池 百合子 殿

東京五輪組織委員会会長 橋本 聖子 殿
 

政府と東京都は東京オリンピック・パラリンピックの中止をIOCに打診してください

 

 東京保険医協会
 

 わが国は現在、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)罹患数の波の振幅が大きくなっており、これまでで最大の第4波に苦慮しています。COVID-19に対応する医療機関はすでに手いっぱいであり、余裕はほとんどありません。3回目の緊急事態宣言が発出されましたが、すべての医療機関は最大限の感染対策を講じながら総じて余裕を持てない困難に向き合っているのが現状です。

 一方、日本は7月になるとスポーツをするのには危険を伴う猛暑日が増えます。熱中症患者が多数発生することは必至であり、医療機関はそれらの患者をCOVID-19との鑑別がつくまで、一人一人を隔離して診察する必要があります。しかし対応する医療機関の医師・看護師は既に疲弊しており、手当てするための施設にも人材にも全く余裕がありません。

 オリンピック・パラリンピック大会(以下「オリ・パラ」)組織委員会は、選手用の指定病院を合計30カ所確保する方針を示しました。選手が優先的に入院できる病床を確保すると説明していますが、それは「いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあう」というオリンピック憲章に到底合致するものではありません。私たちは、感染者数や死亡者数が増加する可能性のあるイベントは、中止することが正しい選択であると思料します。

 パンデミック発生以来、全世界で1億5,500万人以上が感染し、325万人以上が死亡しました。多くの国々はまだCOVID-19に苦戦しています。しかも悪性な変異株が増加しており、今後の推移も予断を許しません。今も治療を受けながら苦しんでいる膨大な数の感染者がいます。とても「人類がコロナに打ち勝った」状態ではありません。このような時、はたしてスポーツの祭典を開いていてよいのか、という根本的な倫理の問題もあります。

 いま最も優先するべきは、COVID-19との闘いであり、人々の生命と生活の安全です。ウイルスは人の移動に伴って拡散しています。オリ・パラ開催がCOVID-19の蔓延を助長し、苦しむ人や死亡者を増加させれば、日本は重大な責任を負うことになります。

 われわれは都民のいのちと健康を守る都内の医師約6,000人の団体として、いまこそオリ・パラの開催が困難であることを、IOCに打診し、IOCの中止決定を引き出すよう強く要望します。

以 上


政府と東京都は東京オリンピック・パラリンピックの中止をIOCに打診してください[PDF:79.6KB]