[主張]東京都議会議員選挙にあたって

公開日 2021年07月09日

 4年に1度の東京都議会議員選挙が6月25日に告示され、7月4日に投開票される。

 憲法第54条は「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行」うことを定めている。衆議院議員の任期は10月21日までなので、どんなに遅くとも11月末までには衆議院議員選挙が実施される。

 都議選の結果は続く国政選挙の先行指標となっており、コロナ禍という未曽有の事態の中で東京のみならず、国全体の行く末を占う極めて重要な選挙となる。東京オリンピックの開催の是非や開催方法、新型コロナ対策、都立・公社病院の独立行政法人化などの地域医療体制のあり方など、医療関係の諸課題が最大の争点となる。

パンデミックの中での五輪開催の是非

 現在の都議は7月22日に任期満了を迎える。その翌日、7月23日が東京オリンピックの開会予定日だ。新たに選出される都議は五輪開催の是非や開催形態について議論することはできない。そのことをもって今次都議選の争点にすべきではないとの意見もある。

 しかし、五輪に対する各会派・候補者のスタンスは、誰を向いて政治を行うかを見極める指標になる。世界的なパンデミックの中で感染拡大のリスクを高める五輪を開催すべきか。いま最も優先するべきは新型コロナ対策であり、人々のいのちと生活の安全だ。

新型コロナ対策 都民のいのちと健康を守れ

 都議会には新型コロナ収束に全力を尽くしてもらいたい。ワクチン接種の促進とともに、介護施設や医療関係者等への定期的なPCR検査、希望する都民がいつでもPCR検査を受けられる体制の拡充による早期発見・早期治療、感染地域の絞り込みなど、感染拡大を阻止する対策を期待する。

都立・公社病院の独法化は中止を

 都立・公社病院は全病床の25%にあたる1700床をコロナ対応病床として、都民のいのちを守る最大の砦として1年以上にわたり全力でコロナ対策にあたっている。そうした状況にもかかわらず、東京都は8都立病院と6公社病院の独立行政法人化を着々と進めている。

 感染症医療や災害医療等、不採算となる行政医療に責任を持つ都立・公社病院の独立行政法人化は中止し、むしろ都立・公社病院を維持、拡充することが求められる。

 医療提供体制を担う全ての医療機関への東京都としての財政措置、保健所機能の抜本的拡充、高すぎる国保料を是正するための都独自の財政支援策、子どもの均等割廃止等、社会保障を拡充する施策を望む。

 長引くコロナ禍への対策で、東京都は財政調整基金を相次いで取り崩しており、今年度末の基金残高は昨年度末と比べて99%減の21億円となる見込みだ。抑制に努めてきた都債も昨年度に比べて約1・8倍の5876億円の発行を予定する。東京都の財政状況は危機的ではないものの余力が減少しているのは確かだ。不要不急の大規模事業を見直していかなければ、都民のいのちと健康を守る社会保障関連予算の確保は難しくなる。

 各会派・候補者の選挙公約を読み込み、この4年間の都政、とりわけコロナ対策と医療・社会保障政策を分析し、一票を投じることが、コロナ禍を乗り切れるか否かを決める。有権者として意思を示すことが、今こそ求められている。

(『東京保険医新聞』2021年6月25日号掲載)