[主張]診療報酬の引き上げを求める

公開日 2021年11月24日

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、患者の受診抑制や、院内感染防止の対策のための出費も重なり、医業経営は危機的状況に陥った。

 地域の医療機関は、各種補助金や融資制度等、あらゆる手立てを使いながら日常診療を維持し、発熱外来や検査、新型コロナワクチン接種、自宅療養者の診療等、求められた役割をかろうじてこなしているのが現状である。

基本診療料の大幅引き上げが必要

 重要なのは、これが今になって起きた問題ではないということだ。

 2002年以降、度重なるマイナス改定で、診療報酬は累計で10%以上引き下げられている。とりわけ初・再診料等は低く抑えられてきた。

 医師の技術や医院経営を継続するための費用を含めた、適正な評価となっていなかったことが、コロナ禍によって浮き彫りになったというべきであろう。

 国民に安全な医療を提供する体制を維持するためにも、基本診療料の大幅な引き上げが求められる。

特例加算廃止・引き下げの撤回を

 特例的に実施されていた外来等感染症対策実施加算(5点)、入院感染症対策実施加算(10点)については、9月末で廃止され、乳幼児感染予防策加算については10月から50点に引き下げられた。

 現在、新型コロナウイルス感染症収束の見通しは立っておらず、特例加算の廃止・引き下げは不当だ。そもそも、院内感染の予防策は医療機関が日常的に求められていることであり、それに係る費用がこれまで診療報酬に含まれていなかったことが、今回のコロナ禍で明らかとなったのである。特例加算は継続・維持し、2022年4月改定に盛り込むべきである。

初診からのオンライン診療解禁の危険性

 新型コロナウイルス対策の特例措置として認められている初診からのオンライン診療について、中医協総会では恒久化が検討されている。本来、診療とは対面で行われるのが大原則だ。オンライン診療は対面診療の補完としての位置づけであり、認められる症例や施設基準などが厳密に規定されている。

 オンラインで得られる情報には限りがあり、対面診療の代替とはなりえない。特に初診の患者をオンラインで診察し、医学的判断をくだすのは、患者の過去の診療情報を得ていたとしても危険である。オンライン診療をどのような形で、どこまで認めていくのかは、慎重な議論と検証が必要だ。コロナ禍に乗じて、なし崩し的に解禁すべきではない。

告示から実施まで十分な周知期間を

 改定内容の周知が不十分なまま4月に診療報酬改定が実施され、その後から疑義解釈・算定方法の取扱い・修正が大量に発出されるという事態が常態化しており、改定の度に医療現場に混乱を招いている。

 中医協総会の資料では、2022年度改定も従来と同様のスケジュールで行うこととされているが、コロナ禍の最前線にいる医療機関に、短期間で改定内容を把握する余裕はない。

 協会は、少なくとも診療報酬改定の告示から実施までの周知期間を3カ月確保することを求めていく。

(『東京保険医新聞』2021年11月15日号掲載)