診療報酬改定率発表 審査指導対策部長談話

公開日 2021年12月28日

2021年12月28日

東京保険医協会
         審査指導対策部長    浜野 博

国民医療向上のためにも、診療報酬の引き上げを呼びかけよう 

 

 政府は2022年4月実施予定の診療報酬改定について、12月22日の予算大臣折衝で改定率を全体でマイナス0.94%とすることで合意した。自民党政権下で5回連続の実質マイナス改定実施が強行される。
 

 本体部分は0.43%引き上げとし、具体的には、「看護の処遇改善のための特例的な対応」でプラス0.2%、「不妊治療の保険適用のための特例的な対応」でプラス0.2%。引き下げは「リフィル処方箋の導入」でマイナス0.1%、「乳幼児感染予防策加算の廃止」でマイナス0.1%とされ、差し引き本体プラス0.23%と発表された。
 

 薬価はマイナス1.35%、材料価格マイナス0.02%とし、全体で0.94%引き下げられる。目玉とされる看護の待遇改善は、コロナ治療等を担う急性期の病院に限定されており、すべての医療機関を対象とするものではない。不妊医療の保険適用についても、公費事業からの転換であり、直接的な引き上げではない。リフィル処方箋の導入、OTC医薬品の保険給付見直し等は医療機関、調剤薬局の基本診療料を引き下げ、薄利多売が可能な大規模チェーン店のみに有利となる改定だ。
 

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(榊原定征分科会長)は11月8日、2022年度予算編成の建議とりまとめに向けた議論を行い、予算編成の焦点の1つである診療報酬改定について「躊躇なく『マイナス改定』をすべき」と強く主張した。本体部分の実質0.23%引き上げでは、昨今の人件費、物価の上昇率にすらおぼつかない。コロナ禍で疲弊し、ぎりぎりの資金繰りをしている医療機関に、政府はこれ以上、何を削減しろと言うのか。
 

 建議では利潤の最大追及を目指す株式会社の経営と、地域に根差し公衆衛生の向上を最大の目標とする医療機関の経営の違いを無視した意見が並ぶ。しかし、これらを「医療費削減のための圧力」という視点だけで見てはいけない。新型コロナ感染症患者を直接受け入れない医療機関は、補助金の対象から外し、経営破綻しても構わないという姿勢からは、国民医療を保障していくという視点は一切感じられない。診療報酬の引き上げ・改善により国民の健康が増進するならば、結果として総医療費が増大していくのは至極当然のことである。
 

 中医協では、今後も2022年2月上旬の診療報酬改定の諮問答申に向け、審議が続く。協会は、診療報酬の連続マイナス改定に強く抗議するとともに、国民医療を守る立場から基本診療料を中心とする診療報酬の十分な引き上げと患者窓口自己負担の大幅な軽減を求めていく。

以 上