【理事会声明】「診療報酬の中医協答申にあたって」

公開日 2022年02月18日

2022年2月12日

【理事会声明】「診療報酬の中医協答申にあたって」

東京保険医協会 第11回理事会

 2月9日、中医協は、2022年度の改定診療報酬を答申した。改定率は「看護の処遇改善のための特例的な対応」でプラス0.2%、「不妊治療の保険適用のための特例的な対応」でプラス0.2%。引き下げは「リフィル処方箋の導入」でマイナス0.1%、「乳幼児感染予防策加算の廃止」でマイナス0.1%とされ、これらを除いた改定率は本体プラス0.23%とされた。
 薬価はマイナス1.35%、材料価格マイナス0.02%とし、全体でマイナス0.94%となる。2014年度改定から5回連続となるマイナス改定である。新型コロナウイルス感染症の拡大、人件費の上昇、借入金の返済などによって医療機関の経営は厳しさを増しており、極めて不十分な改定だ。

■初・再診料は大幅な引き上げを

 初・再診料がまたも据え置かれた。医療費には医療機関経営に係る原資(人件費、光熱費、施設設備費)が含まれる。特に外来医療を担当する看護師等の医療従事者を評価する診療報酬はなく、コロナ禍において日本の医療を支える医療機関の脆弱性も明らかとなった。基本診療料の大幅引き上げを求める。今回新設される外来感染対策向上加算は、診療・検査医療機関だけが対象となり、また、人員や経営規模等の問題で、届出できる医療機関は一部に限られる。すべての医療機関への診療報酬の引き上げを求める。

■入院料の大幅引き上げを求める

 入院では重症度、医療・看護必要度が厳格化(心電図モニターの管理の削除等)される。地域包括ケア病棟における自院内転棟の患者が多い場合の減算拡大、在宅復帰率の引き上げ、入退院支援加算の届出有無での評価区別、回復期リハ病棟入院料の要件厳格化、療養病棟における医療区分3の厳格化、25対1病床の廃止を前提とした点数引き下げと、FIM測定の導入など、現場への締め付けはさらに厳しくなる。コロナ禍で奮闘する医療機関にとって、非常に過酷な改定だと言わざるを得ない。借入金が増大し続けている各病院においては、医療体制を維持するために、基盤となる入院料の引き上げと算定要件の緩和を行わなければならない。

■紹介状なしでの病院受診時の患者定額負担の拡大に反対する

 患者が紹介状なしで病院を受診した場合に、定額の自己負担を求めることは、近隣に診療所等がない場合、その地域における受診抑制を助長するものとなる。今回の改定では更に対象病院が拡大されることとなり、定額負担の金額も増額された。患者に必要な医療の提供を阻害することは断じて容認できない。患者定額負担の撤回を求める。

■初診からのオンライン診療の解禁に抗議する

 オンライン診療を初診から実施することが可能になったことについては、新型コロナウイルス感染症の特例を受けて、なし崩し的に解禁したことに抗議する。初診での診察は医師・患者関係の基礎を構築するためにも、特に注意を払う必要があるため、対面診療を基本としなければならない。

■オンライン資格確認に対する評価に反対する

 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムを導入した医療機関に「電子的保健医療情報活用加算」が新設されたが、安全性への疑問は残されたままだ。トラブルの責任は一切とらないという政府の方針は不信感を増大させている。今回の点数化は拙速に過ぎる。

■リフィル処方箋の導入について

 長期投与が可能な処方について、同一の処方箋を最大3カ月にわたり薬局で使用できることが可能となったが、処方の責任を一部薬剤師に肩代わりさせることになり、患者の病状の把握が疎かになるとともに、また、安易な長期投与を助長するおそれがある。リフィル処方箋の導入は拙速である。

■告示、通知の早期発出を強く求めるとともに通知による解釈変更を行わないこと

 十分な準備期間をもって新点数に対応できるよう点数改定の告示、通知を早期に発出すべく、協会はかねてより繰り返し要望してきたが、今回も発出が遅れたことに対し強く抗議する。さらに、留意事項以外にも大量の一部訂正や疑義解釈が示され、通知により新たな算定制限を示すことが常態化している。通知は告示の解釈を補完するものであり、それを逸脱する内容は認められない。4月1日に施行するのではなく、施行まで3カ月以上の周知期間を設けるよう求める。

 以上、われわれは基本診療料の引き上げを求めるとともに、地域の住民が安心して受診できるよう、患者負担の大幅な軽減を改めて求めるものである。

以上

理事会声明「診療報酬の中医協答申にあたって」[PDF:202KB]

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