世・渋支部:オンライン資格確認 潜む危険性について考察

公開日 2022年03月02日

 11月29日、世田谷・渋谷支部は例会を開催し、会場・Zoom合わせて17人が参加した。

 今回は、「オンライン資格確認の現状と対応」と題し、吉田章副会長が講師を務めた。

 政府はオンライン資格確認の導入をマイナンバーカードの保険証利用と一体のものとして運用しようとしており、2021年10月からは、医療機関窓口でマイナンバーカードを出せば保険証を出さなくても資格確認ができるという制度が始まった。しかし、マイナンバーカードの普及枚数は2021年9月時点で約4760万枚(全国民の約38%)、そのうち保険証として使えるように初期登録が済んでいるものは523万枚で、全国民の約4・2%に過ぎない。

 また、マイナンバーカードが使える医療機関・薬局は9月12日時点で3502施設で、全国の医療機関・薬局約22万9千カ所の約1・5%に過ぎない。政府は10月からオンライン資格確認の本格運用が始まったとしているが、限定的に開始されたというのが実状だろう。

 政府はオンライン資格確認のメリットとして、「保険証入力の手間が減る」「資格過誤によるレセプト返戻が減る」「薬剤情報や特定健診情報等を医療機関・薬局で閲覧が可能になる」等をあげている。しかし、これらはオンライン資格システムを院内の電子カルテ、レセコンにつなげた場合にできることである。これについて吉田副会長は、「コンピュータウイルス等感染被害の可能性、そしてカルテの医療情報がデータセンターに吸い上げられる可能性があることから、院内システムにつなげ連動させることについては、慎重に検討する必要がある」と指摘した。

 さらに吉田副会長は、最近のコンピュータウイルス感染=サイバー攻撃の事例を紹介した。徳島県つるぎ町立半田病院では、カルテデータに身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」がしかけられ、約8万5千人分の電子カルテが閲覧できなくなってしまった。吉田副会長は、「こうした深刻な事態が現に起きている。オンライン資格確認を導入する場合でも、院内システムにつなげない方策を講じるべきだ」と強調した。

 その他、例会では、新型コロナ診療報酬臨時的取扱い、コロナ補助金についてその要点を報告した。世田谷・渋谷支部では、今後も会員に役立つテーマを取り上げ、例会・総会を開催していく。

(『東京保険医新聞』2022年2月5日号掲載)