[主張]診療報酬改定を読む

公開日 2022年03月02日

 2022年度診療報酬改定の諮問答申が2月9日に行われた。

 医療界が共通して求めている初再診料の引き上げは見送られた。医業経営を支える原資である基本診療料の引き上げ無しには、医療機関の経営改善、医療の質の向上を行うことは難しい。改めて大幅引き上げを求める。 

 外来感染対策向上加算6点が新設されるが、算定要件が厳しく医院の施設構造、患者構成、経営規模等により、算定できる医療機関が限定される。すべての医療機関が外来診療時の感染防止対策を行っており、コロナ対応をしているかどうかで医療機関を分断する同加算には問題がある。

 新型コロナに関する診療報酬上の特例的な措置を引き続き実施していくほか、現行の経過措置については終了し、新たな経過措置に置き換わることが示された。新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬は、公費も含め複雑であるため、簡易な運用が望まれる。

 舌下免疫療法や下肢潰瘍の管理料が新設される等、従来評価される点数が無かったものが算定できるよう改定された。 

 前回改定で新設された機能強化加算への新たな要件の追加、地域包括診療加算の要件緩和などが行われた。また、診療情報提供料Ⅰの提供先が追加され、アレルギー疾患生活管理指導表を学校等に情報提供した場合も算定できるようになる。実際、どのような運用となるか通知を注目したい。

 従来のオンライン診療料は削除され、情報通信機器を用いた場合の初診料251点が新設された。再診のオンライン診療は対面の再診料と同じ73点とされた。安易なオンライン診療の拡充は行うべきではない。

 オンライン資格確認システムに対する「電子的保健医療情報活用加算」が新設された。安全性に疑問があるマイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムを、診療報酬で評価することに反対する。

 在宅医療では、以前のような大幅な取り扱いの変更はないが、外来から在宅へ移行する場合の点数や在宅療養指導管理料、在宅自己腹膜灌流指導管理料の加算新設や、変更が行われた。

 検査は汎用点数の引き下げが行われ、遺伝子関連の検査が新設された。注射でも一部項目のわずかな引き上げに留まっている。投薬ではリフィル処方箋が導入され、医師の関与が減少し、長期処方の恒常化による受診頻度の低下が懸念される。処置では下肢創傷処置の新設、手術では創傷処理の引き上げが行われた。

 入院機能の分野では、入院基本料で、一般病床入院基本料6が削除され、従来の7が6に繰り上げとなり、施設基準の変更が予想される。短期滞在手術等入院基本料1では麻酔を使用する手術か否かで入院基本料に差が付けられる。急性期病床削減の観点から、急性期一般入院基本料に係る重症度、医療・看護必要度Ⅰの基準が引き下がる方向だが、新たに基準に組み込まれる入院料もあり、該当医療機関には負担になる。さらに重症度、医療・看護必要度自体の基準が変更されるため、内容に注意しなければならない。

 今回の改定では、従来にはなかったオンラインでの診療が新設されるなど、医療のあり方が変えられてきている。医療の質を低下させることのないよう注視しなければならない。

 公立病院の独法化、公的病院の再編統合、大病院受診時の定額負担など、国民の受診抑制・公的医療の削減になる政策には断固として抗議していく。

(『東京保険医新聞』2022年2月15日号掲載)