[主張]骨太方針2022 医療費削減の撤回を

公開日 2022年08月05日

 政府は6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(以下、骨太)を閣議決定した。

負担増・給付減を推進 防衛費が社会保障費を圧迫

 社会保障については、持続可能な社会保障制度の構築をめざすとして、全世代型社会保障の推進を掲げた。しかし、その正体は、全世代にわたる負担増と社会保障の削減だ。

 医療費適正化の名目で、▽オンライン診療の推進▽リフィル処方の普及▽OTC医薬品・検査薬の拡大▽▽国保料(税)の引き上げに繋がる国民健康保険における法定外繰入金の解消▽地域医療構想の推進による病床削減等が挙げられている。

 他方で、国防予算をGDP比で2%に倍増することを含め、防衛力を5年内に抜本的に強化するという。しかし、防衛費増額の具体的な財源は示されておらず、社会保障の削減に拍車がかかることが強く懸念されている。

医療・介護DXの欺瞞

 政府は、医療・介護費を削減するために、首相を本部長とする「医療DX推進本部(仮称)」を設置するとともに、全国医療情報プラットフォームを構築し、医療情報の利活用を企図している。その基盤となるのが、マイナンバーカードによるオンライン資格確認だ。

 オンライン資格確認システムは、当初、保険証資格の確認のみに使用し、医療機関からデータを収集することは無いとされていたが、各医療機関のレセコン、電子カルテをネットワーク化し医療情報を収集する目的を持つことが次第に明らかになってきている。

 骨太には、保険医療機関・薬局に2023年4月からオンライン資格確認の導入を原則として義務付けるとともに、2024年度中を目途に保険者による保険証発行を選択制とし、将来的な保険証の原則廃止を目指すと記載された。他方で、加入者から申請があれば保険証は交付されるとも明記された。

 オンライン資格確認は2021年10月に本格運用が開始されたが、6月26日時点の運用施設数は23・6%に留まっている。設備維持のための費用や、情報漏洩の危険性、ネットワークセキュリティへの不安等から導入していない医療機関が多い中、原則義務化の方針を打ち出すのは性急すぎる。会員からは「義務化方針に反対してほしい」との要望が協会に数多く寄せられており、協会は5月30日、現場を顧みない強引な計画に対し抗議声明を発表した。

 骨太にはまた、医療情報の利活用について法制上の措置を講じると記載しているが、具体性がない。要配慮個人情報である医療情報が、本人の同意なく使用されることは確実だ。

 さらに「診療報酬改定DX」により「改定に関する作業の効率化」をはかるとも記載されている。しかし診療報酬改定実施の前日に大量の疑義解釈や訂正通知が出され、医療現場の大きな負担となっている現状では説得力がない。改定に十分な周知期間を設けない限り、根本的な解決にはならない。

 以上のように、骨太に記載された医療・介護のDXは、医療現場の実態や要望に基づいておらず、欺瞞的であると指摘せざるを得ない。

 協会は政府に対し、引き続き、①基本診療料を中心とした診療報酬の引き上げ、②患者負担の軽減、③オンライン資格確認の導入義務化中止および保険証の原則廃止の撤回を強く求めていく。

(『東京保険医新聞』2022年7月15日号掲載)