[主張]後期高齢者医療費窓口負担2倍化は中止を

公開日 2022年10月04日

 2022年10月から、一定以上の所得がある75歳以上の医療費窓口負担割合が1割から2割に引き上げられる。単身世帯なら年収200万円以上、複数世帯なら合計年収320万円以上の約370万人が対象となる。

受診抑制に繋がるのは明白

 後期高齢者医療制度の保険料は年々引き上げられており、東京都では2022・2023年度は1人あたり年間平均10万4844円(月額8737円)となる。ただでさえ高額な保険料に加えて窓口負担が2割化すれば、過重負担となり深刻な受診抑制が引き起こされるのは必然だ。

 実際に、協会が2021年に会員へ向けて行った「開業医実態意識基礎調査」では、患者の受診控えによると思われる受診遅れ、重症化事例が「あった」との回答が26・3%にのぼり、75歳以上の窓口負担割合2割化が患者の受診抑制につながるとの回答は60・9%に及んだ。2割化が患者の受診動向に甚大な影響を与えることは明白である。

医療現場の混乱は必至

 さらに別の問題点もある。1割負担から2割負担になる後期高齢者に対しては、2025年9月までの3年間、外来受診における負担増加額を1カ月で最大3000円とする激変緩和措置が設けられる。2割化による負担増加額が1カ月で3000円に満たない場合はそのまま2割負担となるが、1カ月で3000円を超える場合は「1割負担額+3000円」の負担額となる。同一医療機関での外来受診については、窓口で1割と2割の差額分を計算し、3000円を上限として徴収する。複数の医療機関・薬局等での負担増加額の合計が3000円を超えている場合は、高額療養費として後期高齢者医療広域連合から、患者が事前登録した口座へ償還される。

 この複雑な措置が医療機関窓口の事務負担を増大させ、新型コロナウイルス感染症と闘う医療機関に無用な混乱を招くことは必至である。また、そもそも激変緩和措置を設けなければならないほど、2割化の負担が後期高齢者にとって過重であることを政府自身が認めているのだ。2割化実施は速やかに中止しなくてはならない。

今こそ医療・社会保障へ予算投入を

 後期高齢患者の受診抑制を引き起こし、医療機関にさらなる負担を強いる窓口負担の2割化を絶対に許すことはできない。政府は防衛費をGDP比2%(約11兆円)にまで拡大する方針を打ち出しているが、国民のいのちと健康が危機に晒されている時に、医療費負担増を実行する政策は、安全保障に逆行している。今こそ国は医療・社会保障の予算を増額し、国民の生活と医療へのアクセスを保障する役割を果たさなければならない。

 協会は、国会議員要請等を通じた取り組みを一層強め、政府に対して引き続き75歳以上の窓口負担2割化中止を強く求めていく。

(『東京保険医新聞』2022年9月5日号掲載)