[主張]オンライン資格確認導入義務化に反対する

公開日 2022年10月28日

 厚労省は9月5日の官報告示で、療養担当規則を改定し、医療機関へのオンライン資格確認システム導入の原則義務化を盛り込んだ(2023年4月施行)。

 この改定は、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)」に基づいており、義務化は医療界ではなく経済産業界の要請に依るものだ。同方針には、健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針も示され、一連の施策がマイナンバーカード推進策として出されていることがわかる。

 オンライン資格確認システムが本格運用を開始してから約1年が経過したが、実際に運用している医科診療所は、全体の19・9%に過ぎない(9月25日時点)。

 窓口事務やコスト面の負担、セキュリティ上の危険性など、オンライン資格確認には多くの問題点があり、それらのデメリットを負ってまでシステムを導入する動機は医療者側にはない。窓口でマイナンバーカードを資格確認に利用する患者はごく少数で、国民の保険証に対する信頼は揺らぐことがないだろう。患者も医療者も求めていないシステムに多額の血税を注ぐ政府の企図を見極めたい。

 最大42・9万円の補助金(診療所の場合)では導入費用を到底賄いきれず、その後の回線費用や保守費用は医療機関の持ち出しとなる。また、閉院等の理由で、補助対象設備を減価償却期間内に処分した場合、補助金の部分的な返還が求められる。数年以内の閉院を視野に入れている医療機関にとって無駄な負担の強制となり、実際、オンライン資格確認義務化をきっかけとして閉院する医療機関が報告されている。

 厚労省は、2022年末の導入状況を見て、「地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合」に必要な対応を検討するとしているが、年末を待つまでもなく、義務化が地域医療体制を揺るがすことは明らかだ。

 2022年10月1日付の診療報酬改定で電子的保健医療情報活用加算が廃止され、医療情報・システム基盤整備体制充実加算が新設された。マイナンバーカードよりも、保険証で受診した場合の方が高点数になることは、患者側からすれば保険証での受診に対するペナルティとも取れ、理解を得るのは難しい。算定にあたっては、問診票等に「マイナ保険証を積極的に利用いただきたい」旨の記載が必要となり、医療機関は実質的にマイナンバーカード推進の旗振り役を強いられる。医師や国民の意思決定権を阻害する点数であると言える。

 協会の会員アンケートでは、システム導入義務化への反対が63・3%と多数を占めた。義務化反対の会員署名は9月末時点で680筆以上を集めている。協会は医療現場の声を国会議員に届け、政府・厚労省への要請など、義務化の撤回に向けて運動を強めていく。

(『東京保険医新聞』2022年10月15日号掲載)