[主張]子ども医療費助成の多摩格差解消を

公開日 2022年11月21日

 2023年4月から、子ども医療費助成制度(マル子)を18歳まで拡充する「高校生等医療費助成制度」が東京都全域で開始される。

 23区では、すでに全域で所得制限・通院時一部自己負担が撤廃されているマル子が18歳まで拡充する形だ。ところが、多摩地域の足並みは揃っていない。朝日新聞の調べでは島しょ部を除く30市町村のうち、高校生までの所得制限を撤廃するのは15市町村、一部自己負担を撤廃するのはわずか7市町村となる予定である(2022年9月23日付朝刊で報道)。

 このような地域間格差が生まれている背景には、自治体の財政状況の違いがある。現在、マル子は所得制限や通院時の一部自己負担200円を設けた上で実施され、都と各区市町村が費用をそれぞれ半額ずつ負担している。財政状況に余裕のある自治体は独自に補助を上乗せし、所得制限や一部自己負担を撤廃・軽減しているが、多摩地域ではそうできない自治体が多い。

 また、高校生等医療費助成制度は開始から2025年度までの3年間、助成に係る費用を都が全額負担することとなっているが、それ以降は各区市町村と折半する方針である。これでは、2026年度以降財政的に厳しい区市町村は制度を中止する可能性がある。都は制度創設による新たな負担を年間50億円と推計しているが、7・5兆円規模の一般会計予算からすれば過大なものではない。そもそも開始から3年間の費用を全額負担できるのであれば、それ以降も財政負担が可能なはずだ。

 都の担当者は協会との意見交換会で、「マル子は子育てを支援する福祉政策の一環であり、児童手当に準拠した所得制限を設けている」と回答し、所得制限と一部自己負担の撤廃に背を向け続けている。

 所得に関係なく、すべての子どもたちが必要な時に医療機関を安心して受診できる体制が重要だ。居住地域の違いによる医療制度の格差は是正しなければならない。協会は、都の責任で2026年度以降も高校生等医療費助成制度を継続するとともに、マル子を含めて所得制限・通院時一部自己負担を撤廃し、18歳までの医療費を完全に無償化することを強く要望していく。

(『東京保険医新聞』2022年11月15日号掲載)