医科歯科医療安全講習会 新興感染症への対策は急務

公開日 2023年01月11日

  
 講師の青木孝弘氏

 医科歯科連携委員会は11月27日、東京歯科保険医協会合同で医科歯科医療安全講習会を開催し、会場とZoom合わせて57人が参加した。

 坪田有史東京歯科協会会長のあいさつに続いて、青木孝弘氏(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)が「新興感染症への対応~ポストコロナを見据えて~」と題し講演した。

新興感染症への対応

 18世紀以降、ワクチンや抗生物質の進歩により、感染症の予防・治療は飛躍的に進歩した。しかし、1976年にエボラ出血熱、1981年にHIVが出現するなど、この50年間に多くの感染症が新たに発見されている。これら新興感染症の多くは人獣共通感染症であり、ヒトと動物の関わりの中で発生したと推定される。そこで、今後も新興感染症の発生があり得ると考えて、早期発見・早期対応を行う世界的な体制を構築しておく必要があると青木氏は指摘した。

今冬流行への対策

 青木氏は「現時点ではまだポストコロナを見通すことができない」と述べ、今冬の対策に言及した。インフルエンザとCOVID―19の同時流行を見据えて医療体制が計画されている。しかし、多くの一般診療所など、医療機関によっては実施できる感染対策に限界がある。そのため、COVID―19陽性者を全ての医療機関で診ることはできない。他方で、全ての医療機関にCOVID―19陽性者が受診する可能性があるため、医療スタッフや周囲の患者が濃厚接触者にならないような感染対策を行う必要がある。COVID―19以外の患者も多数受診することに鑑み、発熱患者とそれ以外の患者を時間的・空間的に分けることが現実的だ。同時に、換気等の空気感染対策を十分に行う重要性を青木氏は指摘した。

 M痘(サル痘)については、世界的にはハイリスク群への積極的なワクチン接種や啓発が行われ、日本国内では感染拡大が認められていない。診療時にM痘患者に遭遇する可能性は現時点で非常に少ないが、感染対策としては、接触感染、飛沫感染、空気感染への対策が必要だと述べた。

 最後に、須田昭夫会長が「それぞれの医療機関で、ぜひ今日の学びを活かして新興感染症への対策を行ってほしい」とあいさつし、閉会した。

(『東京保険医新聞』2022年12月25日号掲載)