[主張]オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟にご参加を

公開日 2023年03月03日

 厚生労働大臣は2022年9月5日、療養担当規則の一部を改正する省令を公布し、2023年4月1日から患者がマイナ保険証を提示して療養の給付を求めた場合、オンライン資格確認に応じること、そのため予め必要な体制を導入することを、保険医療機関等に義務付けた。しかしこの計画には実施上および法的に大きな問題点がある。

 まず2022年10月末時点でのマイナカード交付率は51・1%であり、マイナ保険証としても利用登録した人は国民の25%以下、マイナ保険証として実際に利用した件数は受診件数の0・5%にすぎなかった。マイナ保険証は十分に普及しているとは言い難い。

 マイナ保険証による本人確認は患者自身がカードリーダーを操作する建前だが、高齢や不慣れな場合には補助が必要になり、現場の混乱を招くことが予想される。保団連の調査では、マイナ保険証の運用を開始した医療機関の4割超が不具合を経験している。我が国のIT技術は完璧から程遠いこともある。新型コロナ感染者の接触アプリ「COCOA」が使い物にならずにお蔵入りしたことは記憶に新しい。

 システムの利用を医療機関等に義務付ければ、機器の設置、保守管理、通信回線の維持などに過剰な負担がかかる上に、ランサムウェアなどのコンピューターウイルスの侵入やカルテ情報の漏洩の危険が生じる。

 医療機関にとって医療情報の守秘義務は重要だ。オンライン資格確認義務化がもたらす経済的・精神的な負担に耐えられないことを理由に閉院・廃院を考える施設が約1割に上っているという報告がある。かかりつけの医療機関がなくなれば、地域医療が損なわれることになる。医療の質の向上を言い立てて国が推し進める制度が、医療を衰退させようとしていることは、手段が目的に合致していないと言わざるを得ない。

 そして、オンライン資格確認の義務化計画には、大きな法的不備がある。

 健康保険法には保険資格の確認方法をオンラインに限定する規定はなく、資格確認の方法に関して省令に委任する規定もない。健康保険法が委任していない事柄を、省令である療養担当規則に書き込んで変更することはできない。

 国家の法律を変えられるのは国会だけである。一大臣や一内閣が国会の議論や法律を無視して、勝手に社会の在り方を変えるようなことを許してはならない。

 協会は保険医・歯科保険医による原告団を結成し、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」に踏み切ることを決定した。原告の参加資格は保険医であることのみで、費用の負担は生じない。現在オンライン資格確認システムの準備中、または既に運用を開始していても参加可能だ。

 日本の医療に禍根を残す、オンライン資格確認義務化に抗議の意思を示しましょう。訴訟へのご参加を心から呼びかけます。

(『東京保険医新聞』2023年2月15日号掲載)