[主張]新型コロナ5類化移行後も公費と特別措置の継続を

公開日 2023年04月06日

 新型コロナウイルス感染症は、5月8日から感染症法上の位置付けが変更され、2類相当から5類感染症に引き下げられる。法的位置付けの変更に伴い、「行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応」から、「幅広い医療機関による自律的な通常の対応」に移行するという。厚生労働省は3月10日、医療提供体制及び公費支援について具体的な見直し方針を示した。

 公費の取り扱いについては、新型コロナの疑い患者に対して実施する検査が対象から外された。また、陽性患者に対する治療費は、入院も外来も経口薬ラゲブリオ等の治療薬を除き公費対象外となる。なお、入院医療の窓口負担に関しては9月末まで高額療養費の自己負担限度額から2万円が減額される。

 診療報酬上の取り扱いについては、外来での「院内トリアージ実施料」300点に新たな要件が追加され、満たすことができない場合は147点に引き下げられる。陽性者を対面で診療した際の「救急医療管理加算1」は外来では入院調整を行わない限り950点から147点に減額され、在宅での2850点が950点に減額される。入院については、重症・中等症患者等に対する特例措置を半減する一方、地域包括ケア病棟等での患者の受入れを新たに評価した。病床確保料については、診療報酬の見直しに連動して重点医療機関の補助単位の上限額が半減された。なお、発熱外来で算定する「二類感染症患者入院診療加算」と重症化リスクの高い陽性者に電話等で診療した際の「電話等による診療」はすでに3月末で終了している。

 政府は新型コロナ感染症の類型変更の理由として、感染症法に基づく私権制限に見合った国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられないと主張している。しかし2022年末から年始にかけての第8波の感染爆発では、救急搬送困難事例が増大し、2023年1月だけでも新型コロナ感染症による死亡者数は1万人を超えた。新型コロナ感染症が直接の死因でない患者を含めると相当数の患者が亡くなっている。

 5類へ移行しても感染力が弱まるわけではない。国民生活の様々な規制が緩和される中、感染拡大が起こった際に大混乱を招くことにならないだろうか。新型コロナウイルス感染症の感染力は季節性インフルエンザの数倍であり、医療機関は引き続いて感染対策等に相応の労力やコストを負担し、医療安全の確保に努めなければならない。本来感染症に対する医療提供体制の確保は行政が責任を果たすべきところ、医療機関に責任の一端を担わせてきた。臨時的取扱いは感染対策、クラスター対策、重症化や合併症の対策などへの対価だ。5類になったとしても対策を行う以上、同等の診療報酬が評価されなければならない。

 5類移行による行動変容の影響も未知数だ。5類移行後の感染状況を把握した上で、医療提供体制及び公費支援を見直すことが必要であり、5類移行と併せて即座に従来の臨時的取扱い等の見直しを実施することは時期尚早だ。

(『東京保険医新聞』2023年4月5日号掲載)