[主張]物価・光熱費高騰への対応を求める

公開日 2023年05月10日

 40年ぶりの水準とも言われる物価・光熱費高騰の影響は医療機関にも深刻な影響を及ぼしている。支出が大きく増える一方、医療機関の収入の柱である診療報酬は国が定めた公定価格であるため、当然値上げにより支出増を補うことはできない。協会はこの間の物価高騰による医療機関への影響について、都内開業医会員4697人にアンケート調査を実施し、3月14日~3月29日の短期間で517人から回答を得た。

 集計の結果、昨年同時期と比較して97・1%の医療機関で電力料金が上昇しており、うち上昇率1~3割が36%、3割以上が24%を占めている。食材料費も56・9%の医療機関で上昇し、感染防止対策費用の増加や、物価高騰の影響を大きく受けていることが明らかになった。また、約1割の医療機関が物価高騰を吸収するために人件費を抑制していると回答した。他業種で賃上げが進む中、医療従事者不足に拍車をかけてしまいかねない状況だ。

 国や自治体に求める支援策として、診療報酬のプラス改定を求めると回答した医療機関が74・7%であることをはじめ、過半数の医療機関が補助金の拡充、税・社会保険料の引き下げを求めている。協会を含む、多くの医療団体がこれまで診療報酬のプラス改定を要望し続けてきたにも関わらず、薬価を含めた診療報酬全体では2014年度から5回連続でマイナス改定だったことが背景にある。また、物価高騰に伴う消費税増は、仕入れに係る消費税を控除することができない医療機関にとって、いわゆる損税負担の増加原因となっている。

 補助金について、国は3月29日の事務連絡で、それまで地方公共団体に交付していた「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を積み増し、このうち7000億円を医療・介護施設等に対する物価高騰支援策等に使用することを改めて推奨している。実際に同交付金を利用して42の道府県で無床診療所を対象とした補助が行われたが、東京都が2023年3月まで実施していた「東京都医療機関物価高騰緊急対策支援金」は、対象が病院と有床診療所のみに限定されていた。しかし、アンケート結果にあるとおり無床診療所にも補助が必要なことは明らかだ。協会は東京都に対して2022年10月・12月に病床の有無にかかわらず、都内におけるすべての医療機関を対象にした支援策を求める要望書を提出しているが、残念ながら要望は反映されていない。

 アンケートには、「このままでは借金を残したまま閉院」等の切実な意見も寄せられている。国は今こそ、医療機関の切実な要望を真摯に受け止め、持続的な物価高の対策として診療報酬のプラス改定を行うべきだ。また、急激な物価変動に対しては、一時的に補助金でカバーすることも有効であり、こうした時限的対策も講じるべきだ。 

 協会は4月19日、厚労省に「物価高騰に対応した医療機関への支援と診療報酬のプラス改定を求める要望書」、東京都に「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金等を活用した都内すべての医療機関に対する支援を求める要望書」をそれぞれ提出した。今後も物価・光熱費高騰への対応を求める取り組みを強めていく。

(『東京保険医新聞』2023年5月5・15日合併号掲載)