[主張]24年度診療報酬改定に抗議する

公開日 2024年03月06日

 2024年2月14日、中医協(中央社会保険医療協議会)は厚生労働大臣に対し2024年度診療報酬改定について答申した。内容は特に内科の診療所に対して極めて厳しいものとなった。

初・再診料の引き上げ幅 賃上げには不十分

 物価高騰に対し医療関係者を対象にした賃上げが昨年から焦点になっていたが、基本的原資となる診察料は、初診料が3点増の291点、再診料が2点増の75点となった。これでは賃上げをすべての医療機関で行うのは困難である。改定ではそれを補うために外来・在宅ベスアップ評価料ⅠⅡが新設された。

 同評価料Ⅰの点数は、初診時6点、再診時2点である。医師・歯科医師を除くコメディカル(以下、対象職員)を対象にした賃上げ計画を作成し、厚生局に届け出ることにより算定できる。この対象職員には、専ら医療事務に従事する者は含まれず、また看護師等を1人も雇用していない診療所は届け出ること自体ができない。

 同評価料Ⅱは8段階に分かれ、Ⅰだけでは対象職員の賃上げを賄えない場合に上乗せして算定するものだ。しかし施設基準の1つに「対象職員が常勤換算で2人以上勤務している」と示されており、小規模の診療所は対象外となる上、計算式が非常に複雑だ。3カ月毎に計画通りに賃上げが行われているかを計算し、区分変更があれば届け出なければならない。改めて、基本診療料である初診料・再診料の更なる総枠引き上げを実行するよう求める。

特定疾患療養管理料 3疾病除外で実質マイナス

 特定疾患療養管理料・特定疾患処方管理加算の対象疾患から、糖尿病、脂質異常症および高血圧症が除外され、現行の特定疾患処方管理加算1(18点)が廃止された。これら3疾患の医学管理は生活習慣病管理料で算定することになる。

 今回の改定で検査料が包括されていない生活習慣病管理料Ⅱ333点が新設された。しかし新たな生活習慣病管理料は外来管理加算を包括対象とし、特定疾患処方管理加算も算定できなくなる。処方箋料が引き下げられたこともあり、実質引き下げである。

 特定疾患処方管理加算2(66点)も10点引き下げられて56点とされ、同加算1(18点)が廃止となったため、上記3疾患以外の特定疾患の管理についてもマイナスとなることは避けられない。

 初再診料を多少引き上げたとしても、医療機関のもう一つの収入の根幹である管理料が引き下げられれば、賃上げの原資が出てくるはずがない。本末転倒である。

長期収載品は選定療養化ではなく価格引き下げを

 保険給付を縮小し、患者負担増とする内容が示された。後発品の発売後5年以上経過したもの、または後発品の置換率が50%以上となったものを対象に、後発品の最高価格帯との価格差の4分の1を自己負担とする。

 医師が医療上の必要性により銘柄名処方(後発品への変更不可とする)する場合や、薬局に後発医薬品の在庫が無いなど後発医薬品を提供することが困難な場合は保険給付の対象となる。複雑な制度を導入しなくとも、長期収載品の価格を後発医薬品並みに引き下げれば済むことだ。

 入院時の食事代の引き上げも、患者負担増を伴うこととなった。一方、政府・財界が進める医療DXへの協力を誘導するための点数化が図られている。診療報酬財源を恣意的に配分することは許されない。

 医療現場の実態と声を顧みない、2024年度診療報酬改定に断固抗議する。

 

(『東京保険医新聞』2024年2月25日号掲載)