[理事会決議]2024年度診療報酬改定に対する決議

公開日 2024年06月06日

2024年度診療報酬改定に対する決議

 2024年6月実施の診療報酬改定は、新型コロナの影響や物価上昇に対応し、賃上げによって人材確保をして、医療の質の維持・向上を図るために、引き上げが期待されていました。しかし、ネット(全体)で-0.12%と5次連続のマイナス改定が実施されました。特に、「生活習慣病を中心とした管理料・処方箋料等の効率化・適正化」として本体改定率から-0.25%もの引き下げは、内科系診療所にとっては大幅なマイナス改定となります。

 改定の内容は、政府が法律の委任なく省令で義務化したマイナ保険証によるオンライン資格確認システムや、医療よりも営利企業優先の「現在の政府が計画している医療DX」の体制整備等を評価する点数を、新設または引き上げています。しかし、マイナ保険証の利用率は極めて低く、トラブルが多発して、実務上の算定は困難です。

 また、長期処方やリフィル処方を推進するなど、総じて地域医療における患者と医療機関の絆を断ち切る方向となり、医療現場を軽視するものと言わざるを得ません。加えて、長期収載医薬品への選定療養の導入は、患者の受療権(安全で良質な医療を公平に受ける権利)を侵害するとともに、事実上の混合診療解禁に等しく、国民皆保険制度を根底から崩すことにつながります。

 さらに、診療所においては2023年度比1.2%、有床診・病院においては2.3%の賃上げを目指すという「ベースアップ評価料」が新設されました。しかし、算定要件や各種手続きが煩雑かつ難解なため、医療現場では机上の空論となることが明らかです。実際には、算定ができず医療費は圧縮されることになります。このままでは、地域医療を支える医療機関の経営に深刻な影響を与えることが必至です。

 当会は、政府・厚労省に対し、医療費の総枠拡大、基本診療料を中心に診療報酬の十分な引き上げ、および、患者負担の大幅軽減を求めてきました。今次の診療報酬改定の内容を勘案し、東京保険医協会理事会は以下の事項を速やかに実現するよう求めます。

 

 

1.すべての医療機関の医療従事者の賃金引き上げを可能にし、併せて諸物価高騰への対応と診療報酬の不合理が改善できるように、今次診療報酬を速やかに再改定し、初・再診料をはじめとする基本診療料を十分に引き上げること。

 

2.特定疾患療養管理料の対象から糖尿病、高血圧症、脂質異常症を除外することを速やかに見直すこと。さらに生活習慣病管理料と外来管理加算の併算定を認めること。

 

3.医療現場のトラブルや情報漏えいを考慮しない、マイナ保険証によるオンライン資格確認の強引な推進をやめること。また、医療機関と患者・国民に混乱をもたらす現行の健康保険証廃止の法律を再改正し、健康保険証を存続させること。

 

4.医薬品の品質や供給不足を無視した、単なる後発医薬品の使用促進はやめること。また、国の責任で医薬品及びワクチンの安定供給を行う体制を構築すること。

 

5.混合診療の拡大につながる長期収載品への選定療養導入は撤回すること。

以上
 

2024年5月11日 2024年度第2回 東京保険医協会理事会

2024年度診療報酬改定に対する決議[PDF:146KB]