[主張]東京都知事選挙に望む

公開日 2024年07月02日

 東京都知事選挙が7月7日に投開票される。

 東京都の2024年度における一般会計の総額は8兆4530億円と3年連続で過去最大だ。歳入の約8割を占める都税収入は、過去最多だった前年度を3・0%上回る6兆3865億円、法人2税(法人都民税、法人事業税)も4・2%増の2兆3016億円と見込まれる。これだけの財政規模があれば、医療・介護・福祉をはじめとする社会保障の拡充は十分可能だ。

 前回(2020年)の都知事選以降、高校生等医療費助成事業(マル青)が開始された一方で、COVID―19への対応が大きく切り詰められ、都内における行政的医療で重要な役割を果たしてきた都立・公社病院が独立行政法人化された。国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの引き上げも行われた。

都知事選挙の争点

 今回の都知事選では、都民のいのちと暮らしを守る都政にすることが求められている。

 具体的には、▽子ども医療費助成制度のうちマル子とマル青に残る所得制限と通院時の窓口負担(1回につき200円)を撤廃し、「三多摩格差」を解消する、▽都の財政支援を強化して国保料や後期高齢者医療保険料を引き下げる、▽都立病院での行政的医療を強化する、▽保健所の機能を拡充・強化する、▽パンデミックを含む災害や公害の対策を強化する、▽生活困窮者への支援を拡充する等、が挙げられるだろう。

PFAS汚染・健康被害への対応を

 多摩地域を中心とした都内の井戸水から国の暫定基準値(50/ℓ)を上回るPFASが検出されてきた。2022年から、多摩地域の市民団体が住民791人の血液検査を実施し、対象者の約46%から米国科学アカデミーの指標(※)を超えるPFASが検出された。

 PFASによる汚染は長期化が予想され、健康への影響について、個人の対応には限界がある。東京都の広域問題として汚染源を特定するとともに、希望する都民に対し、東京都が責任を持って血液検査や健診を実施することが必要だ。

 会計検査院の調査報告では、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの大会経費について、道路整備等の関連経費も加えた総額は3兆6845億円にのぼった。結果として立候補時に見積もった7340億円の5倍以上に膨張した。その中で、選手村の料理175t、大会関係者用の弁当30万食分のみならず、感染対策のマスクやガウン等、医療用品も大量に処分されていた。

予測される首都直下地震等、災害への備えが必要であり、今後は不要不急の大規模開発を見直して、都民のいのちと暮らしを守る医療・介・福祉などを確保するべきだろう。

 都知事選候補者の公約を冷静に見極め、明日の都政を守る一票を投じたい。

※米国アカデミーが2022年8月に公表した臨床ガイダンスでは、血液中における7種類のPFAS(PFOS・PFOAを含む)の合計値が20/㎖を超えると健康被害の恐れが高まるとし、その患者には特別の注意(診察、検査)を勧めている。

 

(『東京保険医新聞』2024年6月25日号掲載)