[主張]衆議院議員選挙に向けて

公開日 2024年11月08日

 10月27日に衆議院議員選挙が投開票される。日本の針路を決し、民意を政治に反映させる絶好の機会だ。協会は主要政党に医療・社会保障分野を中心に政策アンケートを実施した。各政党の政策を見極める参考にしていただきたい。

今次診療報酬を再改定し負担に見合った報酬を

 2024年度診療報酬改定では改定率(ネット)が▲0・12%となり、2016年度改定から5回連続のマイナス改定となった。新型コロナの治療薬等への公費支援と診療報酬上の特例措置は4月から廃止され、4月・5月は評価がない上に、6月以降は発熱患者への評価点数が著しく引き下げられた。また、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等で本体改定率から0・25%もの引き下げが強行され、医業経営に深刻な影響を与えている。

 一方、消費者物価指数の2022年度平均は対前年度比+3・2%、2023年度平均は同+3・0%、2024年度も+2%半ば以上で推移している。インフレと逆行した診療報酬改定は容認できるものではない。

 改定の目玉とされた賃上げ対応は、医療関係職種の改善には程遠いものだ。月給与平均が全産業平均を10%近く下回っているにもかかわらず、その他の診療報酬も物価上昇に見合わない水準に設定された。地域医療を支える医療機関等の存続も危ぶまれる状況だ。

 医業経営の原資となる診療報酬を引き上げてこそ、医療従事者の賃上げ、医療の質と安全の確保が図られる。低医療費政策を転換し、診療報酬の大幅な引き上げを行うことが不可欠だ。

政府主導の「医療DX」は速やかに見直しを

 2023年4月からオンライン資格確認が原則義務化され、2024年12月2日には健康保険証の新規発行が停止される。マイナ保険証をめぐっては医療現場でトラブルが頻発し、情報漏洩の危険性に直面している。「医療DX」の名のもとに行われる政府の施策に、患者と医療現場は不信感を募らせている。

 政府が進める「医療DX」とは、医療費抑制を目的とし、産業界のために医療情報を利活用し、国家による国民監視の構造を生み出すものであり、国民の健康に寄与するものではなく、公的医療保険制度の趣旨・目的にも反している。

 政府は、産業界や国家の利益のために医療DXを推進するのではなく、現場の実情に寄り添い、患者・医療者本位のデジタル技術の活用策を講じるべきである。

患者負担増は中止を 

 コロナ禍、諸物価高騰等で国民生活が困難に陥る中で、2022年10月から一定所得以上の後期高齢者の窓口負担が2割となり、さらに3割負担の対象者を拡大することが検討されている。2024年10月からは長期収載品の選定療養も始まった。介護分野でも利用者負担増が依然として狙われている。少子化対策の財源と称した「支援金」は2026年度から医療保険料と併せて徴収されることになる等、負担増のオンパレードだ。

 防衛費が大幅に増加する一方、社会保障費を抑制する政策は続行され、国民の負担は直接的にも間接的にも増加しており、これ以上の負担増は容認できない。社会保障費は国民のいのちを守る、最も重要な安全保障の予算だ。国の予算配分を抜本的に見直し、社会保障の予算を一番に優先し確保すべきである。

政治のあり方が問われる

 私たちの生活は「政治のあり方」に大きく左右される。政策の誤りが国民のいのちと暮らしを脅かす結果にもなり得る。いのちを守る政治を選択したい。投票所に足を運び、主権者として貴重な一票を投じよう。

 

(『東京保険医新聞』2024年10月25日号掲載)