[主張]誰もが保険診療を受けられる体制を守るために

公開日 2024年11月08日

 現行の健康保険証の新規発行停止が12月2日に予定されている。

 マイナ保険証の利用率が低迷し続けている中、国民の意思を無視して健康保険証の新規発行停止を強行するのは許されない。

資格確認書の発行 国の責任で十分な周知を

 12月2日をもって、健康保険証が廃止されるわけではなく、現行の健康保険証はその有効期限が切れるまで(最長1年間)はそのまま使用可能である。

 国は、マイナ保険証を登録していない人に対して、現行の健康保険証と同等の機能を持つ資格確認書を、当面の間申請によらず交付するとしている(自治体によっては、マイナ保険証の登録をしていても資格確認書を送付する)。

 マイナ保険証を登録していない人は、資格確認書が(当面の間)自動で交付されるため、従来と変わらずに保険診療を受けることができる。マイナ保険証を登録している場合も、利用登録の解除申請を保険者に行うことで、資格確認書の交付を受けることが可能だ。

 しかし、これらの情報は国によって十分かつ正確に周知されているとは言い難い。国や保険者のHPや広報物には、大きな文字で「マイナ保険証を登録してください」等、強制と取られかねない文言が並ぶ一方、資格確認書の交付やマイナ保険証の利用登録解除については、小さく簡潔に書かれているか、省略されている場合が多い。このため、国民の間で「12月2日で保険証が使えなくなる」との誤解が広まっている。

 マイナ保険証を1度使用したが、その後は健康保険証を使っている場合、マイナ保険証の登録を解除しなければ資格確認書は交付されないが、このことを知らない当事者は少なくない。

 このままでは、医療現場や自治体に今以上の混乱を招くことは火を見るより明らかだ。国が責任を持って、正しい情報を国民に周知するべきだ。

マイナ保険証登録解除 オンライン申請の仕組みを

 マイナ保険証の利用登録解除の手続きは、手書きの申請書類が原則となっている。申請書類は各保険者が作成することとされ、申請者は保険者から入手しなければならない。

 マイナ保険証の利用登録は、マイナポータルや医療機関・薬局のカードリーダー、セブン銀行ATM等から行える一方、その解除申請には書類が求められるというのは公正さを欠いており、DXの名に値しない。

 自治体によっては、オンラインでの解除申請を受け付けており、都内でも東久留米市が、マイナポータルを通じて登録解除を行える体制を作っている。原理的に全国で同じ方式が可能であるはずだ。

 保険者に任せるのではなく、国の責任で、オンラインでマイナ保険証の利用登録解除申請が行えるシステムを構築すべきだ。

資格確認書を国民全員に交付せよ

 国はメディアを総動員したマイナ保険証の促進キャンペーンを続ける一方、利用促進を妨げる事柄(資格確認書の交付やマイナ保険証の登録解除など)の周知には露骨なまでに消極的で、その手続きにも不合理なハードルを設けている。国民をシステムの主体ではなく、情報を吸い集め、管理する対象として捉える国の姿勢が表れている。

 本来的には、マイナ保険証登録者を対象から外して資格確認書を交付すること自体が無駄な手続きである。資格確認書は現行の保険証と同様、国民全員に交付すべきである。

 また、現在は保険料の滞納者に対して、すぐに10割負担とするのではなく、数カ月単位の「短期被保険者証」が交付される仕組みとなっている。しかし、12月2日以降は「短期被保険者証」は廃止されることとなっており、お金がないために医療を受けられない事態の発生が危惧される。機械的な対応を避け、保険料を納めることができない事情を把握するための体制を担保すべきだ。

 資格確認書を巡る、これらの要求は「健康保険証の存続」と同義だ。協会は、誰もが安心して保険診療を受けられる体制を守り続けるための取り組みを引き続き強めていく。

 

(『東京保険医新聞』2024年11月5日号掲載)