公開日 2025年02月12日
マイナ保険証の登録解除 11月末時点で1・3万件超
厚労省は2024年12月19日、マイナ保険証の利用登録件数が、11月末時点で約7874万件と、10月末から1カ月で約127万件増加し、11月時点のオンライン資格確認におけるマイナ保険証利用率は過去最高の18・52%となったことを報告した。
一方で、マイナ保険証の利用登録解除に関する申請が、受付が始まった10月28日から11月末までの間で1万3147件に及んだことを明らかにした。国民の不安と疑問のあらわれといえる。
12月2日から8日の速報値として、マイナ保険証の利用率は約29%と公表されているが、同時にマイナ保険証利用登録者(11月末現在で国民の約63%)の半数以上は、依然として従来の健康保険証を使い続けていることもわかる。また、厚労省が示す「利用率」は、マイナ保険証の利用件数をオンライン資格確認の利用件数で割ったものであり、オンラインによらない資格確認の件数は分母に含まれていない点に注意が必要だ。
協会・保団連をはじめとする医療団体・市民団体がマイナ保険証の問題点を国民へ周知することで、マイナ保険証の利用率上昇を押しとどめ、登録解除につなげる運動が今後一層重要になる。
協会は国や保険者に対して資格確認書の一律交付を求めるとともに、患者向け「これまで通り受診するための3つのポイント」のポスター・リーフレットを会員へ提供し、12月2日以降も資格確認書を利用して保険診療が受けられることを周知する取組みを進めていく。
診療所のマイナ保険証 利用率10%未満が7割
診療所における医療DXの状況を把握するための日医総研による調査では、24年7月分のレセプト件数ベースでマイナ保険証の利用率が「10%未満」である施設が約7割であることがわかった(図1)。
電子処方箋については「運用中」が4・6%、「導入したが未運用」が9・9%だった(図2)。「導入を決めていない」(27・3%)、「導入予定がない」(26・4%)の施設に理由を聞いたところ、「システムの導入・改修の費用負担が大きい」(58・3%)、「導入のメリットを感じない」(52・5%)、「ICTに詳しいスタッフの不在・不足」(40・4%)が上位を占めた。
「医療DX推進体制整備加算」は2024年10月の改定で、マイナ保険証利用率によって3段階(加算1は11点、加算2は10点、加算3は8点)に再編された。求められるマイナ保険証利用率について、2025年1月以降加算「1」・「2」・「3」でそれぞれ30%、20%、10%に引き上げられているが、アンケート結果から、要件を満たし、同加算を算定できる医療機関は限定的とみられる。
また、電子処方箋の発行体制を有していることが同加算の算定要件とされており、当該要件を満たしているものとみなす経過措置が2025年3月末で終了することになっているが、アンケートの結果を踏まえ、調査報告書ではマイナ保険証の利用率や電子処方箋の導入率の分布から実態を把握し、医療DX推進体制整備加算の施設基準を検討する必要性を指摘している。
この他、ICTの知識がある人材に関しては、約9割の施設が「不足」と回答した。64・1%の施設で医師本人が診療の傍らシステムの対応を行っていた。また、システム費用については、種類や契約形態などによりばらつきが大きく、リース契約の場合、電子カルテ・レセコンの保守費用を含めた年間費用は平均で約472万に上り、500万円以上が3割を占めた。診療所は規模が小さく、ICT対応に係るさまざまな負担感が大きいことが明らかになった。
資格確認書 全被保険者に申請によらず交付を
保団連が2024年8月~9月に実施した会員アンケート調査では、マイナ保険証でオンライン資格確認をする際にトラブル・不具合の発生が「あった」と答えたのは、70・1%にのぼった。「●で表示される」「資格なしと表示される」等のエラーの他、少数だが他人の情報が表示されたとの報告もあり、深刻な医療事故に繋がる危険性がある。
健康保険証の新規発行停止後も、12月4日に徳島県阿南市でマイナ保険証の「有効期限切れ」のエラー表示が出る不具合が最大7493件発覚し、12月5、6日には青森県六戸町、中泊町で合計1393件の国民健康保険の負担割合の誤登録が発覚するなど、トラブルが相次いでいる。オンライン資格確認の情報自体が間違っている場合、健康保険証の券面と照らし合わせなければ間違い自体に気づけないため、今後さらに被害が深刻化する恐れがある。
マイナ保険証によって「なりすまし受診」が防止できると宣伝されているが、厚労省の報告では、国保でなりすまし受診や健康保険証券面の偽造などの不正利用が確認されたのは、2017年から2022年までの5年間で50件に過ぎず、マイナ保険証のトラブル件数とは比較にならない。
2023年6月の健康保険法等改定、2024年8月の関連省令の改定により、従来の健康保険証(被保険者証)の記述は削除され、資格確認書の記述に置き換えられた。
マイナ保険証を登録していない人には従来の健康保険証と同等の機能を持つ資格確認書が、当面の間は自動的に交付されるが、「当面の間」とは具体的にいつまでなのかは示されておらず、資格確認書の法的な位置づけは不安定と言わざるを得ない。
上記のようなトラブルの他、マイナ保険証は発行や更新に約1カ月を要するために、紛失、引っ越し・氏名変更時の届け出忘れや期限切れによる失効などの際に、無保険の期間が発生する。また、原則本人が役所で申請と受け取りを行うことは、高齢者や障害者にとって大きな負担・障壁となる。
誰もが保険で医療を受けられる体制を守るために、協会は、資格確認書を①マイナ保険証の登録の有無にかかわらず、すべての被保険者に交付すること、②「当面の間」ではなく、申請によらず一律に交付することを法的に定めること、を国に強く求めていく。
(『東京保険医新聞』2025年1月25日号掲載)