東京保険医協会 第111回 定時総会決議

公開日 2025年04月24日

東京保険医協会 第111回 定時総会決議

 

 私たちはすべての国民のいのちと健康を守るために国民皆保険制度を堅持し、人々が尊厳を保って平和に暮らせる社会の実現、及び保険医の生活と権利を守ることを目的として活動しています。

 

 昨今の急激な人件費の増加や物価高騰等の影響により、医療機関の経営は非常に厳しい状況にあるにもかかわらず、2024年度診療報酬改定は全体で-0.12%となりました。当会の会員医療機関を対象に実施したアンケート調査では、2023年6月~8月と2024年6月~8月を比較して保険診療収入が「減った」との回答が約6割に上りました。特に病院では、コロナ以降に各種補助金が廃止されたほか、人件費、委託費、保守点検費用、診療材料費等の高騰により、経営が悪化し存続が危ぶまれています。速やかに診療報酬を期中改定し、初診料・再診料、入院基本料をはじめとする基本診療料を大幅に引き上げることを求めます。

 

 2024年12月2日に健康保険証の新規発行が停止されましたが、マイナ保険証によるオンライン資格確認では未だにトラブルが続いています。マイナ保険証の保有者には原則として資格確認書が交付されないため、トラブルが起きた際は無保険扱いとなる場合があります。社会保険料を支払っている人が保険診療を受けられない事態が生じてはなりません。マイナ保険証の有無にかかわらず医療を切れ目なく受けられるように、当面の間は資格確認書をすべての被保険者に一律で交付することを求めます。また、本年1月に国会に提出された保険証復活法案が成立するよう国会に働きかけます。

 

 昨今の、ワクチンを含めた医薬品の深刻な供給不足は行政の怠慢です。医薬品は、先発医薬品と同等のAG(オーソライズド・ジェネリック)の品質を保ちつつ、安定供給に国が責任を持つことを望みます。

 

 後期高齢者の医療費窓口2割負担導入と社会保険料の引き上げ、入院時食事療養費の患者負担部分の引き上げ、健保本人3割負担等によって、患者の自己負担は限界を超えている上、高額療養費の自己負担限度額引き上げが計画されています。一方、防衛費は拡大の一途を辿っており、その財源確保のために社会保障費の削減と国民負担増が実行されています。私たちは、現行憲法の理念に基づき、歯止めのない防衛費拡大に反対するとともに、社会保障において「公助」の責任を果たすことと、地方自治を尊重した住民本位の政策を求めます。

 

 日本国憲法 第25条第2項は、「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の社会的責務を定めています。第111回定時総会にあたり、以下の項目の実現を希求します。

一、医療機関の経営が破綻しないよう、診療報酬を期中改定し、基本診療料を大幅に引き上げること。

 

一、超高齢社会を迎えた時代において、社会保障費の削減は中止し、医療・介護に必要な財源を確保すること。

 

一、医療機関に対するオンライン資格確認システム導入の原則義務化を撤回すること。

 

一、「無保険者」を生み出さないよう、従来の保険証の新規発行ができるようにすること。当面の間は資格確認書をすべての被保険者に一律で交付すること。

 

一、「医療DX」を安易に推進せず、患者の権利と医師の守秘義務を尊重した医療のデジタル化を実現すること。

 

一、訪日観光客増加に伴う新興・再興感染症対策に努めること。

 

一、医療・介護の患者・利用者負担増を行わないこと。高額療養費の自己負担限度額引き上げ方針は白紙撤回すること。

 

一、国民健康保険制度に必要十分な国費を投入して、国保料を軽減すること。

 

一、日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことを高く評価し、核兵器禁止条約を早期に批准すること。

以上
 

2025年3月22日  東京保険医協会

2025年3月22日総会決議[PDF:141KB]