[主張]2025年東京都議会議員選挙にあたって

公開日 2025年06月24日

 4年に1度の東京都議会議員選挙が6月22日に投開票される。都議選の結果は、続く参議院選挙の先行指標となっており、国政の行方をも占う極めて重要な選挙だ。

盤石な医療提供体制を

 COVID―19の対応や昨今の物価高騰、そして診療報酬改定で医療機関を取り巻く状況は悪化の一途を辿っている。全国保険医団体連合会が実施した調査では、回答した都内の医療機関のうち72%が2024年1月と比べて収入減となり、そのうち約半数が1割以上の減収だった。

 2025年度の都の予算では、地域医療確保緊急支援事業として、入院患者1人当たり1日580円、高齢者受け入れのための病床確保料として1床あたり年629万円、小児・産科・救急医療で患者の受け入れを推進する病院には1診療科あたり1114万円を給付するとしているが、対象が限定的だ。また、当面の支援として都は医療機関等物価高騰緊急対策支援金を実施しているが全く不十分であり、地域医療を守るために、医療提供体制を担う全ての医療機関へ都としてさらに財政措置が必要だ。

 多くの反対があったにもかかわらず、2022年7月に都立・公社病院の独立行政法人化が強行された。感染症対策や災害医療等の不採算となる行政的医療は、民間医療機関では採算が取れずに担うことが難しい。独法化後も、その役割は都立病院に求められている。行政的医療を重視し充実した体制を整えていくことを引き続き訴えていく。

患者負担の軽減と助成を

 2022年10月に後期高齢者の医療費について窓口負担2割が導入されて以降、負担増による受診控えが起きたことが厚労省の調査で明らかになっている。現在は激変緩和措置が実施されているが、不十分であるうえに2025年9月で終了するため、受診抑制がさらに加速するだろう。都として負担増分の助成制度を創設することが急務だ。また、高すぎる国民健康保険料を是正するための都独自の財政支援策や、子どもの均等割廃止を求める。

 マル乳、マル子に加えて、都は2023年4月から高校生等医療費助成制度(マル青)を実施し、18歳までの医療費助成が実現された。さらに小池都知事は2025年10月から子ども医療費助成制度の所得制限を撤廃する方針を明らかにしたが、通院時1回200円の自己負担は依然残存する。都内自治体間の格差が解消されるよう、自己負担を撤廃し、18歳までの子ども医療費を都内全域で完全無償化するよう要望していく。

 都は2024年4月から「高齢者聞こえのコミュニケーション支援事業」を実施し、補聴器支給を行う自治体に対し費用の2分の1を助成することになった。補聴器の購入に対する助成を実施する自治体は増えているものの、助成内容にも格差がある。高齢化の進行に伴い、聞こえの支援が今後ますます必要だ。自治体の財政状況に左右されずに十分な助成制度が実施できるように、当該支援事業の補助率を引き上げる等の対応を求めたい。

PFAS問題への対応を

 2024年8月にPFASを含む汚染水が横田基地外に流出した疑いがある。2025年5月に国と都が基地に立ち入り調査をしたが、浄化装置の性能を調べるのみで、周辺地下水の調査は実施しない方向だ。都がイニシアチブを発揮してPFASの汚染源を特定し、汚染実態調査や住民への健康影響にかかる調査を実施するとともに、希望する都民に対し、都が責任を持って血液検査や健診を公害医療として実施することを要望する。

 都民のいのちと暮らしを守る都政を実現するため、この間の医療・社会保障政策を分析した上で、各会派の選挙公約を読み込み、有権者として意思を示すことが今こそ求められている。
 

(『東京保険医新聞』2025年6月15日号掲載)