公開日 2025年08月26日
北支部は7月25日にオンラインで支部例会を開催し、5人が参加した。「米国トランプ政権の混乱が日本の医療に与える影響」について理解を深めた。
日本に対しては15%の関税が課される見通しである。関税措置については米国の国際貿易裁判所一審で違法判決も出ているが、最高裁判決までは効力が確定せず関税は少なくとも来年まで避けられない状況だ。USTR(米国通商代表部)は日本の薬価制度を「薬価が低すぎる」と批判しており、今後の二国間交渉で新薬価格の引き上げ要求が予想される。2026年から始まるメディケア薬価交渉制度では、対象外薬品の拡大により制度の骨抜きが懸念されており、このことも薬価引き上げ圧力に影響がある。こうした動きを踏まえ、草間支部長は「保健福祉省長官に就任したケネディJr.による自然療法推進やワクチンに関する誤情報が医療行政の信頼性を揺るがしていることにも注視が必要だ」と報告をまとめた。
日本国内では「骨太方針2025」に基づき、医療費削減と医療DXの推進が進められている。医療DX推進体制整備加算では、電子カルテや電子処方箋の導入状況に応じて診療報酬が加算されるが、マイナ保険証の利用率が加算要件となっており、2026年10月には最低基準が45%から60%へ引き上げられる予定だ。しかし、現場では利用率の低迷や資格確認システムの不具合による混乱が続いており、保険証の有効期限切れの対応も不明瞭で、医療機関の負担が増している。
標準型電子カルテの全国導入も医療DXの柱として位置づけられ、2026年度中の完成を目指して整備が進められている。電子カルテ導入済みの会員から音声入力や院内多職種活用事例などメリットも共有されたが、「紙カルテの方が使いやすい」「リタイヤ時期を考えると必要なのか」との声も出た。
OTC類似薬の保険外し問題では、特に保湿剤のヒルドイド(ヘパリン類似物質)を例に挙げ議論。先発品の保険給付価格は約455円であるのに対し、市販品では1200円前後と大幅に高く、毎日使用が必要な患者にとっては負担が増大する。参加者からは「治療に必要な患者には不可欠な薬剤であり、安易な保険外しは医療アクセスの格差を生む」との指摘があった。一方で皮膚科の会員からは必要以上の量を処方し、家族や知人に譲渡するケースも見られ、医師の裁量権を奪わないことを前提に処方量の制限やレセプト記載の厳格化など、適正使用を促す制度設計が必要ではないかとの声も出た。
(『東京保険医新聞』2025年8月25日号掲載)