[主張]正確で迅速な保険資格確認を守るために

公開日 2025年09月24日

オン資システムの脆弱性

 2024年12月2日に従来の健康保険証(被保険者証)の新規発行が終了したが、マイナ保険証によるオンライン資格確認(以下、オン資)の窓口でのトラブル等は日々続いている。

 2025年6月17日には、オン資システムが医療機関で接続しづらくなる障害が全国的に発生した。民間のクラウド業者による設定変更が原因だとされているが、詳細は不明だ。

 デジタル方式への一本化は脆弱性を高める。車のアナログキーや電車の切符などを見てもわかる通り、アナログの手段を残しておくのは当然である。

 2025年4月3日、厚労省は後期高齢者に対しマイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書を一律交付することとした。利用率の低さや自治体窓口での混乱等が理由とされたが、実際は若年層の利用率も低く、後期高齢者のみに限定する合理性はない。資格確認書は全世代に一律に交付すべきだ。

期限切れの保険証を認める異常事態

 東京都の国保加入者の多くは9月末で保険証の有効期限切れを迎える。遅くとも12月1日には全ての保険証が効力を失う。

 厚労省は6月27日、期限切れの保険証や「資格情報のお知らせ」のみを持参する患者に対して、移行期の暫定的な取り扱いとして、3割等の負担割合を求めてレセプト請求を行うことを認める事務連絡を発出した(2026年3月末まで)。

 混乱を避けるためとはいえ、公的書類の有効期限切れを半年以上も認めるのは異常であり、しかもオン資システムを備えていなければこの対応は不可能である。協会にはこれまで「厚労省の通知通りに保険請求をしたが返戻された」という相談が多く寄せられており、実務的に患者10割負担を余儀なくされる懸念がある。

スマホのマイナ保険証開始 医療現場に混乱と負担

 厚労省は8月27日の中医協総会で、スマホ搭載型のマイナ保険証でのオン資システムを9月19日に開始すると発表した。一部例外を除き、従来のカードリーダーはスマホに対応しておらず、別に汎用カードリーダーを用意する必要がある。購入費用の半額(上限7千円)を補助する国の事業が始まったが、ポータルサイトで取得したクーポンコードをAmazonビジネスの専用ページで使用する必要がある。

 7~8月に行われた実証事業では、最初の設定が難しい、利用方法がわかりにくい等の意見も出た。医療機関のスマホ対応はあくまで任意だが、厚労省は全医療機関でスマホ対応が可能になるとの誤解を招きかねない広報を行っており、医療現場に混乱と負担が押し付けられる恐れがある。

 また中医協は8月27日、スマホでの読み取りに失敗して資格確認が行えなかった場合、その場でマイナポータルにログインし、表示された資格情報の画面を提示すれば、患者は3割等の適切な自己負担で保険診療が受けられることとした。さらに福岡厚労相は9月2日の閣議後会見で、スマホのマイナ保険証に未対応の医療機関に患者がスマホのみを持参した場合に「10割負担とならない対応の検討を進めたい」とも述べた。

資格確認の正確さを損なうオン資システム

 資格確認の効率化や正確性の向上を謳ってオン資を推進してきたにもかかわらず、資格確認の厳密性を損なう例外的な取り扱いを乱発するのは本末転倒である。廃止したはずの保険証を、期限切れでありながら認めざるを得なかったこと自体、政府方針が誤っていたことを示している。

 マイナ保険証の有無にかかわらず、従来の保険証や資格確認書のようなアナログの資格確認手段を全国民に一律に保証すること、さらにはそれを法的に位置づけることが必要だ。

(『東京保険医新聞』2025年9月15日号掲載)