公開日 2025年11月18日
中医協では現在、2026年度診療報酬改定に向けた議論が始まっている。改定率は、例年通り2025年12月末に決定される予定だ。診療側からは医療機関の経営状況を踏まえた対応を求める意見が上がる一方で、支払側からは、給付と負担のバランスを考慮した「メリハリ」のついた改定を求める声が上がっている。
10月17日の中医協総会では、生活習慣病管理料、かかりつけ医機能にかかる評価(初診料の機能強化加算)、後発医薬品・バイオ後続品の使用体制等の評価が取り上げられ、激しい論戦となった。支払側は検査料等を包括する生活習慣病管理料Ⅰは同管理料Ⅱと比べて受診や検査の頻度が少ないことからⅠの引き下げを強く求めたほか、外来管理加算の廃止や処方箋料の引き下げを主張したのに対し、診療側は療養計画書の要件緩和や包括範囲の見直しの必要性を主張した。
高市首相は医療機関等の物価高騰対策として「診療報酬や介護報酬の改定を待たずに経営の改善、処遇改善につながる補助金を措置する」と表明するなど、医療機関の窮状に一定の理解を示す発言をしているものの、連立を組む日本維新の会は国民医療費を年間4兆円以上削減することを提言しており、全く予断を許さない状況だ。
「メリハリをつけた対応」の実態は大幅なマイナス改定となるおそれがある。
医療機関の経営悪化 地域医療の崩壊が目前
医療機関の経営悪化は、病院・診療所を問わず、深刻な問題である。関東圏の各保険医協会が合同で実施した会員アンケートでは、2023~24年度にかけて医科の無床診療所の売上げが落ち、事業所得の減収率は平均14%に及んでいることが明らかになった。全国保険医団体連合会は9月16日に「地域医療を守るため診療報酬の即時改定等を求める要望書」を内閣府、厚労省、財務省に提出し、緊急の対応を求めた。
日本医師会が実施した緊急経営調査でもほぼ同様の結果が出ており、9月11日には、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の三師会合同で、医療従事者の賃上げの実現や物価高騰への対応のため、期中改定あるいはそれに相当する財政支援の早急な実施を求める要望書を発出した。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、日本慢性期医療協会、全国自治体病院協議会の6病院団体も9月10日、2025年度補正予算での病院への支援策や、次期診療報酬改定での10%超の引き上げを求める「緊急要望」を提出している。
この動きは10月にはさらに加速し、10月3日に北区議会が全会一致で「医療機関への経営支援を求める意見書」を採択し国会と政府に対して提出、10月12日には保団連関東ブロック協議会が10%以上アップを求める緊急要望を決議、10月14日には日本医師会をはじめとする40の医療関係団体が加盟する国民健康医療推進協議会が「大幅なプラス」改定を決議、10月15日には埼玉県議会が「社会経済情勢を適切に反映した公定価格の改定等を求める意見書」を相次いで提出した。東京協会では10月31日に「地域医療の崩壊を防ぐための緊急財政措置及び診療報酬大幅引き上げを求める要望書」を提出した。
診療報酬引き上げは医療界全体の声
地域医療を存続させるため、医療機関の経営を支える具体的な措置が必要であることは、医療界全体の共通認識である。支払側の主張する「メリハリある改定」、特定の領域だけ引き上げ、他の領域を下げるような改定では、医業経営を守ることはできない。基本診療料を中心とした大幅な引き上げが必要不可欠だ。
協会では、諸物価高騰および賃上げに対応するために、次期診療報酬改定での基本診療料を中心とする診療報酬の十分な引き上げと、2025年度補正予算及び2026年度予算も活用した対応を求めていく。
(『東京保険医新聞』2025年11月15日号掲載)


