公開日 2026年03月26日
2025年12月に医療法が改正された。「オンライン診療」が医療法に定義された上で、オンライン診療を提供する施設であるオンライン診療受診施設も定められた。4月から運用が開始されるオンライン診療受診施設(以下、オン診施設)についてその問題点を指摘する。
非営利原則を守れるのか
医療法第7条第7項及び医療法第54条は、医療の非営利原則を定めている。介護老人施設や介護医療院についても同様の規定が存在し、それぞれ非営利原則を定めている。しかし、改正後の第7条第7項には「オン診施設」の文言が含まれていないため、営利目的による開設の道が開かれた。オンライン診療は行政からお墨付きを得たビジネスになり、営利企業の医療本体への参入を許し、オン診施設を通じた患者の囲い込みや過剰な営利追及につながるおそれがある。これまで堅持してきた医療の非営利原則がなし崩しにされないよう、オン診施設が非営利原則に基づいて運用されるようにするべきだ。
医療の質を担保するための基準や届出を
オン診施設の設置者は法人も可能で、医療従事者である必要はなく、設置者や法人が定めた責任者は、常駐・専任であることも要しないとされている。また、設置後10日以内に都道府県知事に届出すればよく、事後届出制であり、行政への事前相談・確認等も求められていない。
2025年6月13日に閣議決定された規制改革実施計画では、オン診施設の構造基準等については、プライバシー保護、衛生管理、情報セキュリティを含む良好な通信環境の確保等を必要最低限にするとされている。また、オン診施設として、公民館、郵便局、駅構内の交通施設等が想定されているが、このような医療提供を想定して作られていない場所でオンライン診療を受けることを認めることは、医療の質が担保されないおそれがある。
2026年1月26日の第124回社会保障審議会医療部会では、オンライン診療が可能な場所の類型の中で「医療提供施設」として病院・診療所と並んで「オン診施設」が分類されているが、同部会で、オン診施設はあくまで患者がオンライン診療を受ける「場所」を提供する施設であり、医療を提供する場ではないと位置付けている。「医療提供施設」に分類しながら他方で「医療を提供する場ではない」とする説明は矛盾している。「医療を提供する場ではない」という説明によって、医療機関よりも基準や届出を緩和し、結果的に営利企業が参入しやすい環境を整えているのだとしたら問題である。
患者にとっては、オンラインで医師の診察を受けることになるので、医療機関との区別は難しい。患者のプライバシー配慮や、衛生管理、情報セキュリティ等、本来厳格に対応するべき事項は多い。医療の質を確実に担保できるような基準や届出を定めるべきだ。。
オン診施設の設置者にも基準に係る責任を求めるべき
オン診施設におけるオンライン診療の実施責任は、医療機関が負い、基準に適合しない場合には適切な措置を講じる責任をも負うこととされている。医療機関がオン診施設の基準の適合性を確認するにあたっては、オン診施設が記入したチェックリストを活用することが想定されているが、単なるチェックリストで適合状況を適切に確認できるのかは疑問である。
また、現行のオンライン診療指針上、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(Dto P with N)において診療の補助行為を行うことは可能とされていることから、オン診施設において、看護師等による診療の補助行為を可能とするべきとの意見が出ている。
このようにオン診施設で診療を実施することがなし崩し的に増えていくのであれば、管理運営が適切になされているか日々の検証が不可欠であり、単に「場所を提供している立場に過ぎない」では済まされない。
オン診施設におけるオンライン診療の実施責任を医療機関に丸投げするのではなく、オン診施設自らが基準の適合に責任を持つべきだ。
開設地域を限定すべき
医療アクセスが困難なへき地等に、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を通知によってこれまで特例的に認めていたところ、その状態を解消する目的でオン診施設の法制化が提案された背景がある。それを踏まえれば、オン診施設を都市部に開設する必要は全くなく、目的と手段が整合しない。むしろ、安易にオンライン診療を推進することで、患者の急変時等に対応できない遠隔地でのオンライン診療等、不適切な医療の提供を発生させる懸念がある。
オン診施設の開設は医療資源の少ないへき地等、少なくとも地域を限定するべきだ。
(『東京保険医新聞』2026年3月25日号掲載)


