公開日 2026年03月09日
診療報酬改定 基本診療料大幅引き上げを
大手メディアが「30年ぶりの大幅プラス改定」と報じた2026年度診療報酬改定だが、2月13日の答申で示された点数は、初診料据え置き、再診料はわずか1点の引き上げという衝撃的な数字だった。別途算定できるとされた物価対応料(2点)を含めても、この間の物価高騰に見合う引き上げ幅とは言い難い。
基本診療料本体のわずかな引き上げ幅とは対照的に、ベースアップ評価料の引き上げ幅はほぼ「倍増」と呼べるものだ。継続した賃上げに係る取り組みの実績によって算定できる点数に差を設ける等、診療所での届出が低迷している同評価料への誘導が露骨である。本来、診療行為と直接関係がない「賃上げ対応」を単独で診療報酬の枠組みで評価するのは、診療報酬の趣旨を逸脱している。
ベースアップ評価料を算定しない場合、今次改定は実質的にマイナス改定である。
物価対応料も含め、基本診療料の引き上げを回避するためにこのような点数を設けることは、診療報酬制度自体を形骸化させかねない。医師の診療行為を正当に評価した診療報酬制度に立ち戻り、基本診療料を大きく引き上げることが必要だ。
際限ない負担増につながるOTC類似薬の追加料金
OTC類似薬の77成分、約1100品目に対して、薬剤費の4分の1を「特別の料金」として患者から徴収することが2025年末に自民党・日本維新の会の間で合意され、2026年度中の実施が予定されている。
ロキソニンやアレグラ、ヒルドイド、リンデロンなど日常で使用される多くの薬が該当し、3割負担の患者の場合、実質5割分を医療機関窓口で自己負担する計算となる。
長期収載医薬品の選定療養や受診時定額負担とは違い、OTC類似薬の処方に関して患者側に選択の余地はなく、3割以上の負担を求めないとした健保法附則第2条に違反する。
自民・維新の合意文書では、2027年以降の対象薬剤範囲の拡大や「特別の料金」の負担割合の引き上げも検討されている。一度許せば際限なく患者負担が拡大させられる恐れがある。
高額療養費制度の見直しはセーフティネットの破壊
同じく2025年末に、高額療養費の限度額の見直し案が示された。全世代への引き上げや多数回該当の上限引き上げは見送られたものの、大部分の利用者にとって大きな負担増となる。
厚労省の試算では、高額療養費制度見直しによる医療費削減額は2450億円だが、そのうち1070億円(約44%)が受診抑制によるものと見込まれている。
高額療養費制度の利用者はその多くが重篤な疾患や重傷の患者であり、医療へのアクセスはそのまま生死に直結する事柄である。こうした制度利用者の「受診抑制」を見込むということ自体、限りなく非人道的である。
2月24日の衆議院本会議で、高市首相は高額療養費制度について「制度の持続可能性の確保と長期療養者や低所得者へのセーフティーネット機能の強化の両立を目指し見直す。年間上限の仕組みを新設した」と答弁している。
しかし、給付費の削減額が2450億円なのに対して、年間上限の新設による給付費増加額は540億円に過ぎず、削減額の方が圧倒的に大きい。首相の説明は詭弁であり、政府の案はセーフティネットの破壊そのものである。
地域医療の継続のために
その他にも、2026年度の予算案では、長期収載品の選定療養拡大、後期高齢者の2・3割負担の対象拡大や保険料・窓口負担への金融所得勘案、介護保険の利用料2割負担の拡大、ケアプラン作成の有料化等、様々な負担増が予定されている。
医療機関が安定して地域医療を続けられる体制、そして国民がお金の心配なく必要な医療を受けられるように、医療費抑制政策の抜本的な見直しを求めて、協会は活動を強めていく。
(『東京保険医新聞』2026年3月5日号掲載)


