[主張]「外来医師過多区域」の問題点

公開日 2026年04月07日

 2025年12月に医療法が改正されたことに伴い、医師「偏在」対策として「外来医師過多区域」が定められた。実質的な無床診療所への開業規制の導入となる「外来医師過多区域」に、都内では17の特別区が候補となり、2026年4月に施行された。

 以下、政府の「医師偏在対策」の問題点について、特に外来医師過多区域に焦点を当てて指摘する。

「医師不足」の解消が先決

 政府は、医師「偏在」対策として「外来医師偏在指標」を用いて外来医師過多区域を算出し、当該地域で新規開業する際には様々な条件を挙げているが、偏在以前に医師の絶対的な人員不足がより深刻な問題である。

 OECD加盟国の平均値である人口1000人当たりの医師数3・9人と比較しても、日本は同2・6人と低水準にある。

 医療需要の増大や高齢化の進展を踏まえれば、根本的な問題である医師数不足を解消すべきである。

地域医療の実情を勘案しない「偏在指標」

 厚労省の「外来医師偏在指標」の算定式は、単に地域の医師数や人口状況等を基準としている。

 この指標は診療科等を考慮しておらず、不十分な指標で偏在の評価を行うことは、地域において特定の診療科や専門分野の医師不足を一層深刻化させるおそれがある。

 そもそも、医療機関は地域医療を支えるためにそれぞれ連携や役割分担を担っている。その地域の実情に応じて地域医療を支えており、画一的かつ単純な数値による評価の見直しは、かえって医療機関間の協力関係を損ない、地域全体の医療提供体制の弱体化につながりかねない。行政の画一的な判断で「地域医療への寄与が不十分」と判断されることは問題である。

 医療提供体制を考えるにあたっては、画一的な指標ではなく地域の実情を勘案すべきである。。

自由開業制の事実上の否定

 2026年1月16日に開催された「第9回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」の資料では、外来医師過多区域における新規開業希望者には、地域で不足している医療機能(夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等)の提供や、医師不足地域での医療(土日の代替医師としての従事等)を要請することができると示されている。しかし、このような制度は、新規開業医に対して過重な負担を強いるものであり、自由開業制の事実上の否定となる。

 医師がどのような専門を身につけ、どこの地域でどういう医療機能に従事するかは、自身の医師としての在り方やキャリア形成、家庭の事情等を踏まえて医師が自ら選択するものである。自由開業制は、憲法に保障された職業選択の自由を担保するものであり、堅持すべきである。

 行政からの強制的な要請によって医師の自由なキャリア形成・ワークライフバランスが損なわれれば、結果として医師の担い手が減少し、長期的には医師不足が一層進行するおそれがある。

労働環境等の改善・整備や支援策の充実を

 医師の地域「偏在」対策を進めるにあたっては、医師数全体の底上げに加えて、医師の労働環境や研修体制等の改善・整備、支援策の充実を通じて取り組むべきである。

(『東京保険医新聞』2026年4月5日号掲載)