[主張]健康保険法等改正法の成立に抗議する

公開日 2026年06月17日

 2026年5月29日、参議院本会議において「健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決・成立した。

 参議院の審議では、「一部保険外療養」の適用対象が、薬剤に限定されるか薬剤以外の療養の給付全体に拡大されるかの法解釈が問題となった。

二転三転する答弁 法文そのものは修正されず

 5月21日の参議院厚労委員会では、保険局長から「一部保険外療養については、法律第63条第2項第6号の規定ぶりだけを見れば、OTC類似薬に限定されないように読める」との答弁があったが、同26日の審議ではその立法目的・立法事実を答弁できなかった。同28日には、これまでの答弁を修正し「規定の趣旨としては、第63条第1項第2号に規定する薬剤のみを対象とした」と述べ、一部保険外療養の対象を「薬剤のみ」に限定する法解釈を示した。

 しかし、最終的に法文そのものの修正は行われないまま法案は成立した。法解釈を変更したのであれば、法文も修正または削除すべきであり、そうしていない以上、条文上は薬剤以外に拡大する余地が残されていることになる。

全世代を直撃する負担増・健康被害

 対象がたとえ「薬剤のみ」だとしても、その影響は甚大だ。

 法案の成立により、2027年3月から77成分・約1100品目の医療用医薬品(OTC類似薬)について、通常の自己負担とは別に、薬剤費の4分の1が保険外となり、患者に追加負担が課される見込みである。

 さらに2025年末の財務・厚労大臣の「大臣折衝事項」では、2027年度以降に対象範囲や負担割合を拡大していくことが明記されており、今後、際限なく対象薬剤や負担割合が拡大していくことが懸念される。

 政府は現役世代の保険料負担抑制を理由に法改正を押し進めてきたが、保険料軽減効果は1人当たり月約33円に過ぎず、薬剤費の4分の1が追加負担になれば、容易に打ち消される額である。一般的に使用される多くの薬剤が対象となっており、「現役世代」も含め国民全体に負担が及ぶ。

 受診抑制や服薬中断、医師の判断に依らない自己服薬等による健康被害が強く懸念される。安易な医療費削減策で国民の健康を脅かすことは断じて許されない。

国民皆保険制度を脅かす法案成立に抗議する

 本改正は、国民皆保険制度の土台を崩すものと言わざるを得ない。法文を変えるまでには至らなかったものの、答弁において解釈の変更を引き出したのは、協会を含めた患者・医療者の運動によって問題点を可視化してきた成果でもある。協会には2千筆を超える反対署名が寄せられている。

 一部保険外療養導入が実施される2027年3月までには時間がある。協会は国民皆保険制度の根幹を脅かす本法案の成立に強く抗議すると共に、撤回を求める運動を強めていく。

(『東京保険医新聞』2026年6月15日号掲載)