公開日 2026年10月26日
高額療養費制度の自己負担限度額引き上げ(以下「見直し」)が2026年8月に実施された。
今回の「見直し」は、患者の負担を大幅に増やし、国民に大きな影響を与えるものだが、同時にその決定過程にも重大な問題があった。
既成事実を作るためだけの形だけの「意見聴取」
2024年末から議論が進められていた「見直し」は、多くの国民からの抗議の声を受けて一時凍結された。その後、患者団体も参加する「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(以下専門委)が開かれたが、専門委では具体的な金額が最終回の第9回まで明かされず、患者団体の代表委員は最後まで制度の「見直し」に対する懸念を訴えていた。にもかかわらず、政府は国会で、専門委に患者団体が参加したことを強調する答弁を繰り返した。
さらに、厚労省は2026年6~7月にかけて、「見直し」に関するパブリックコメントの募集を行った。寄せられた約5300件のコメントの大半が否定的な意見だったが、7月29日に交付された改正政省令ではパブリックコメントの内容が一切反映されなかった。集めるだけで実際には聞く耳を持たないというのであれば、意見を募る意味がない。形式だけの「意見聴取」は、国民を愚弄するものである。
26年8月「見直し」の効果・影響を検証すべき
2027年8月には、二度目の自己負担限度額の「見直し」が予定されている。所得区分が細分化され、多くの所得区分で自己負担月額上限がさらに引き上げられることになる。
5月に成立した健康保険法等の一部を改正する法律案には、附帯決議として「高額療養費制度の支給要件等の見直しに当たっては、(中略)国民の健康状態の悪化や医療費の増大につながることのないよう、所得区分別、年齢別、疾病別など詳細な影響を継続的に検証し、必要に応じて速やかに見直しを行うこと」が盛り込まれた。
しかし、専門委がこれまで行ってきたのは、患者の年収や疾患等を想定したシミュレーションのみで、当事者への定量的な調査は行われていない。
厚労省は2027年8月実施予定の「見直し」についても、パブリックコメントの募集を行ったが、募集期間は2026年8月実施直後の8月29日から9月27日だった。このタイミングでは、2026年8月「見直し」の影響を十分に検証することはできない。
10月16日の参議院予算委員会で上野厚労相は、「必要な受診が抑制される想定はしていない」と述べ、政府は同様の答弁に終始しているが、重い傷病のある患者にとって大きな負担増となる事実は変わらない。手続き上、今回の「見直し」は法案審議を必要としないが、根強い反発のある政策を形成する中で民意を反映するためにこそ、パブリックコメントという制度は存在する。「意見は募るが決定事項だから反映しない」という政府の振る舞いは、民主主義にもとるものだ。
協会は、厚労省に対し、2026年8月実施の「見直し」の影響を調査・分析し、その結果を国民に示すこと、その上で、2027年8月「見直し」の実施については、抜本的に再検討することを求める。
(『東京保険医新聞』2026年10月25日号掲載)


