保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】第190回 通常国会にのぞむ

公開日 2016年02月25日

 安全保障関連法、改正マイナンバー法などを数の力で強引に成立させて、「これからも国民に丁寧に説明する努力を続けていく」と安倍首相の記者会見で幕を閉じた前回の通常国会。しかし、憲法の規定にもとづき四分の一以上の国会議員が要請したにもかかわらず臨時国会はいっこうに開かれず3カ月が経過した。

 この間、10月には環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を『大筋合意』し、年末には消費税10%への引き上げに伴う軽減税率の枠組みを自民・公明だけで固める決定などを進めた。いずれも国民の声に耳を傾けることなく、また政策に関する十分な説明も行われなかった。

 そのなかで1月4日から第190回通常国会が開会した。安倍首相は「新三本の矢」を発表し、「強い経済」「子育て支援」、そして「安心につながる社会保障」を挙げているが、具体的な計画や達成時期についての説明を聞きたい。

 現在の国民生活は、首相が言う「景気が上向いてきたから妻も働いてみようか」などという状況ではなく、また月25万円も稼げる女性がどれほどいるだろうか。非正規労働者の割合は40%を超え、増え続けている。国民年金の平均月額も5万4,497円と“安心につながる”には程遠い。来年4月の消費税10%への引き上げが行われれば、生鮮食品・新聞などの“8%据え置き”税率分を除いても、国民1人あたり2万7,000円程度(当初は1万4,000円程度と答弁)の負担増だ。社会保障分野も、過去の小泉政権時を上回る規模で抑制(毎年3,000~5,000億円、今後5年間でおよそ1兆5,000億円削減)する計画で、そのほか財政制度等審議会の工程表では、さらなる医療・介護などの負担増メニューも画策されている。

 最も懸念されることは、安倍政権の「憲法改正」をにらんだ動きだ。夏の参院選に向けて、発議に必要な3分の2を目指すとし、国政の全権を首相一人に委ねる、いわゆる“緊急事態条項”への意気込みも語った。またも数の力だけで物事を考える現政権に危うさを感じるのである。

 先に成立した安保関連法についても、野党は共同で今国会に同法の廃止関連法案を提出するほか、今春には全国有志の弁護士・元裁判官らによる集団違憲訴訟も準備されており、廃止を求める声は根強い。国民は丁寧な説明を求めている。

 ここに来て衆議院解散によるW選挙をちらつかせる自民党内からは、安倍体制を支持する声ばかりが聞こえてくる。選挙前ということもあり、国民に反対の声が高まりそうな法案は選挙後に先送りすることが予想される。TPPは担当大臣の金銭授受疑惑による突然の交代ばかりか、日本語の条文がつくられていないという重大な欠陥が明らかとなり条約の問題点を審議する論戦はさらに空転しそうだ。

 「知らせること、丁寧に説明すること」。今国会に対してわれわれは、今まさにその姿勢を待ち望んでいる。

(『東京保険医新聞』2016年2月25日号掲載)

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