保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】医療を壊すマイナス改定

公開日 2016年01月25日

 政府は2015年12月21日、2016年度診療報酬改定の改定率について、本体はプラス0.49%、薬価と材料価格はマイナス1.52%で、全体の改定率はマイナス1.03%と発表した。

 この結果、マイナス改定は2014年度に続く2回連続となった。また、前回に引き続き、薬価の引き下げ分が本体に充当されないこととなった。

 2014年改定に引き続いて、今次改定でも在宅医療費の引き下げが狙われている。1月13日に中医協で決定された骨子では、在宅時医学総合管理料等(以下、在医総管等)について、「重症度が高い患者の評価の拡充」が挙げられている。厚労省が想定している「重症患者」は、資料によると、疾患では多発性硬化症、重症筋無力症、パーキンソン病関連疾患など、処置では中心静脈栄養、人工呼吸、気管切開、酸素療法などを受けている状態が挙げられている。

 しかし、このような患者は在宅医療に特化した医療機関でしか診られない。仮に「重症患者」以外の患者について在医総管等の評価が引き下げられるようなことになれば、在宅医療専門でない医療機関は撤退を余儀なくされ、結果的に在宅医療の質の低下と、在宅医療そのものが後退する恐れがある。在医総管等の疾患に応じた評価の新設ではなく、専門でない医療機関でも在宅医療に関われるような点数設定をすべきである。

 前回の改定で政府が進める「地域包括ケアシステム」の具体化として、地域包括診療料・診療加算が導入されたが、その算定要件の緩和も予定されている。現行の対象患者は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・認知症のうち2疾患を有する患者だが、認知症の患者に対しては高血圧症・糖尿病・脂質異常症以外の疾患を持つ患者にも算定できるようにすることが提案された。しかし、地域包括診療料等は地域に根付いておらず、届出医療機関は減少傾向にある。このような点数に医療費を充てるよりも、全医療機関に関係する診察料等の引き上げをすべきだ。

 特に診療所の再診料は、2010年改定で病院の再診料と統一される際に71点から69点に引き下げられた。初・再診料には「診察にあたって基本的な医療の提供に必要な人件費、設備、光熱費、施設整備費等がふくまれる」ことは厚労省自身が認めていることである。

 保団連の調査では、1カ月当たりの再診料収入と「看護師・医療事務員の給与総額」を比較すると、外来管理加算を考慮しても算定1回当たり6点以上不足していることが明らかになっている。医療機関の該当経費が充当されるよう、引き下げられたままの初・再診料は、大幅に引き上げるべきである。

 2002年度~2008年度の改定では本体部分を含め大幅な引き下げが連続し、「医療崩壊」を引き起こしたのは周知の事実である。その後、抜本的な診療報酬引き上げは実施されておらず、今回の本体部分のわずか「0.49%」の引き上げでは、あまりに不十分である。医療現場が疲弊すれば、「医療崩壊」にいっそう拍車をかけることにつながり、患者・国民のいのちや健康を守れない。協会は、診療報酬の引き上げを強く求めるものである。

(『東京保険医新聞』2016年1月25日号掲載)