公開日 2013年02月15日
2013年1月25日、協会は厚労省内の厚生日比谷クラブで記者会見を開き、医師法21条の異状死体等の届出の解釈に関する公開質問状を厚労省幹部に送付したことを発表した。同時に全国の国立病院機構・大学病院院長、法医学者など計432人に「医師法21条の正しい解釈」に関するアンケートを実施していることも公表した。
会見には拝殿会長、細田悟勤務医委員会委員長、佐藤一樹勤務医委員会委員が出席。
拝殿会長は冒頭、「全ての医療事故を警察に届けなければならないという医師法21条の誤った解釈を是正する必要があり、厚労省には正しい解釈を周知する責任がある」と述べ、医療従事者が不当に刑事被告人となるケースを減らしたいと訴えた。
細田委員長は、12年10月26日に開かれた厚労省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」で、田原克志・医政局医事課長が「医師が死体の外表をみて検案し、異状を認めた場合に、警察に届け出る」「検案の結果、異状がないと認めた場合には届出の必要はない」との見解を表明したことと医師法21条の解釈をめぐる経過を説明した。
細田委員長は、医師法21条の誤った解釈が広まった原因として、「日本法医学会異状死ガイドライン」(94年5月)、「厚生省保健医療局国立病院部政策医療課(当時)作成『リスクマネージメントマニュアル作成指針』」(00年8月)、「日本外科学会ガイドライン」(02年7月)を列挙。さらに、「これらの各ガイドラインで誤った『拡大解釈』を認める記述を放置してきた厚労省の不作為の責任は重い。厚労省には正しい解釈に基づき届けを行うよう、通達を出す義務があるはずだ」と主張し、公開質問状とアンケートの趣旨を説明した。
佐藤委員は、今回のアンケート調査と公開質問状の狙いについて「医師法21条の正しい解釈が広まることにより、壊れかけた医師と患者の関係を元に戻したいという思いが原動力になった」と発言した。また、「医療倫理の観点からも、医師が医療事故の事実を報告すべき相手は、警察ではなく患者とその家族であるはずだ」とし、医療事故の当事者が刑事罰で責任を負わされることは、真相究明や医療安全に資することはなく、むしろマイナスに働くと述べた。
協会は今後、公開質問状とアンケートの結果をまとめ、ホームページなどで公開すると共に、引き続き医師法21条の正しい解釈の周知に努めていく。
会見当日はマスコミ10社から取材を受け、その模様はメディファクス等で報道された。
(2012年10月26日「厚労省・医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会)
- 連死について届け出るべきというようなことを申し上げたことはない。法医学的異状を判断する際に日本法医学会ガイドラインも参考にして、最終的には検案した医師が異状であるかどうかを判断する。
- リスクマネージメントマニュアル作成指針は国立病院などに対して示したもので、その他の医療関係者がこれに拘束される理由はない。マニュアル作成指針は医師法21条についてのみ解釈を示したのではなく、標準的な医療事故防止の手順書という形で出した。
- 医師法21条について2004年に最高裁で、「自分が診察していた患者かどうかは関係なく、死体の外表を検査して、異状を認めた場合には警察署に届け出ることが必要である」ということが示されている。
(日本医事新報No.4625 2012年12月15号より転載)
厚労省が公開質問状に回答
1月25日の記者会見後、厚労省医政局医事課 企画法令係長の小峰氏より電話連絡が協会に入った。協会が今回送付した公開質問状について、口頭で回答したいとの申し出があり、以下の回答があった。協会は書面での回答を求めている。
- 医師法21条の解釈について厚労省の見解は、第8回検討部会で発言した通りである。議事録でも明記されているので、参照していただければご理解いただける。
- 公開質問状の質問1「リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針」、質問2「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の記述の変更については、現在継続して開催している「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」において最終的なとりまとめが出た上で、記述の変更が必要であれば、対応する予定である。
以上が厚労省医事課長としての回答と理解していただいて構わない、との回答を得た。