医師法21条の正しい理解について、厚労省幹部へ公開質問状を提出

公開日 2013年01月16日

 協会は2013年1月15日付けで、厚生労働大臣以下、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官、厚生労働事務次官、厚生労働省医政局長、厚生労働省医政局医事課長に対し、医師法21条の正しい理解に係る公開質問状を送付した。以下に、その全文を掲載する。

公開質問状

2013年1月15日

厚生労働大臣、厚生労働副大臣、
厚生労働大臣政務官、厚生労働事務次官、
厚生労働省医政局長、厚生労働省医政局医事課長 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 冠省 貴職におかれましては、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。  今回は、医師法21条の正しい理解に関連して、貴省作成の

  • 「リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針」[2000年8月]、
  • 「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」[1995年以降]

 について2つだけ質問をさせていただきます。

 最初に、前提を確認させていただきます。貴省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」第8回会議(2012年10月26日) におかれまして、田原克志医政局医事課長は、医師法21条について、「医師が死体の外表を見て検案し、異状を認めた場合に、警察署に届け出る。これは、診 療関連死であるか否かにかかわらない」と発言されました。このことによって、2004年4月13日の都立広尾病院事件の最高裁判決を貴省として改めて確認 し「検案の結果、異状がないと認めた場合には、届出の必要はない」と明示したことになりました。すなわち、わが国の司法と行政における医師法21条の法解 釈は一致していることが明確になったと存じます。

 ところが、「リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針」は、「医療過誤によって死亡または障害が発生した場合、またはそ の疑いがある場合には、施設長は速やかに所轄警察署に届出を行うことを、国立病院などに対してお示した(田原医事課長)」とも発言されています。よって、 現時点でも国立病院などの施設長だけが、貴省の医師法21条の解釈すなわち条文そのものや都立広尾病院事件の最高裁判決と真っ向から対立する不条理な立場 にあります。

 また、「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」平成10年度版から最新の平成24年度版まで全ての年度版の5ページには、「『異 状』とは『法医学的異状』を指し、日本法医学会が定める『異状死ガイドライン』等を参考にしてください」という記述があります。ご存じのようにこの「異状 死ガイドライン」の内容も医師法21条の条文や都立広尾病院事件の最高裁判決の内容にかけはなれたものになっております。そもそも医師法には[異状死]を 定義したり規定したりする法律は存在せず、21条は[異状死体等の届出義務]であることはご承知の通りです。

 以上の現状を鑑み、以下のお尋ねにお答えいただきますようお願い申し上げます。

【質問1】
 「リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針」の改正のご予定はございますか。
 「予定あり」の場合は、改正予定日を記入し「予定なし」の場合はその理由を医師法21条条文と都立広尾病院事件最高裁判決の解釈と関連してご記入をお願い致します。
【質問2】
 「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル(=死亡診断書マニュアル)」平成25年度版では上記日本法医学会「異状死ガイドライン」に関する記述の変更をなさいますか。
 「変更あり」の場合は、変更内容を記入し「変更なし」の場合はその理由を医師法21条条文と都立広尾病院事件最高裁判決の解釈と関連してご記入をお願い致します。

不一