公開日 2015年12月05日
外来の機能分化をすすめるために「主治医機能の評価」としての「地域包括診療料」が2014年の診療報酬改定で導入された。診療所と200床未満の病院が届け出可能だが、「常勤医師3名」「院内処方が原則」「24時間対応」「特定の主治医が診察したときに算定」などの施設基準や算定要件が話題となった。
2015年7月の時点で、届け出施設数は全国で93、東京都内で22にすぎない。さらに届け出をしていても、実際に算定にいたった対象患者の割合はわずか9%であったという。
2016年度の診療報酬改定で、再びこの点数が注目されている。「かかりつけ医を普及するための定額負担」と題し、要件緩和を進めるべきだという。医療現場が患者に十分な医療を提供しやすい算定要件・点数設定となれば、歓迎されるだろう。
問題はかかりつけ医以外を受診した場合(地域包括診療料が算定されない場合)に、現行の窓口負担とはべつに、「小額の定額負担」の導入が検討されていることだ。施設基準や算定要件は2016年4月から緩和し、定額負担は2016年3月までに結論を出し、遅くとも2017年1月からの通常国会に法案提出を狙っている。
他にも機能分化を名目にした「紹介状なし大病院受診時定額負担」の導入が、2016年4月から義務化するべく、病院の規模(特定機能病院、地域支援病院など)や金額(1,000円~1万円)が中医協で議論されている。
「主治医」「かかりつけ医」「ゲートキーパー」「ゲートオープナー」などという名前をならべても、その本質が重要だ。主治医機能の評価をする地域包括診療料が、なぜ“包括報酬”なのか。かかりつけ医以外を受診すると、なぜ受診時定額負担という“ペナルティ”になるのか。
真に機能分化を目指すのであれば、むしろ患者が安心して適切に医療機関を受診できる体制が必要ではないか。すでに“包括報酬”化が進んでいる一部の入院点数では、必要な検査や薬剤を提供しにくい事例が、多々語られている。
差額ベッド代等の保険外収入に頼らざるを得なくなっている病院も少なくない。何より、日々の診療の中で多くの医師が、患者負担がもはや限界にきている、あるいは限界を超えていることを感じているのではないか。
このままでは、いっそう経済的な理由による受診抑制が進み、医師が計画的な管理・治療を提供しにくくなる恐れがある。
主治医機能や機能分化の名を騙り、新たな窓口負担を次々と導入することに、われわれ医師は反対の声を上げていくべきだ。
(『東京保険医新聞』2015年12月5・15日合併号掲載)