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【主張】新しい日米防衛のための指針(ガイドライン)――「積極的派兵主義」ではないか

公開日 2015年06月05日

 安倍首相とオバマ米国大統領は4月29日に会談し、新しい「日米防衛のための指針」(ガイドライン)を発表した。ガイドラインの改定は1997年から18年ぶりになる。

 指針は自衛隊が地球規模で米軍に協力し、戦闘地域の軍事支援まで行うことを明記した。日本が「海外で戦争する国」になることを、総理大臣が個人で米国に誓約したことになる。

 国会無視であり、政府要人に課せられた憲法遵守義務違反である。日本の独立と主権をないがしろにする、卑屈な対米従属の姿でもある。

 日本国憲法は国際紛争を解決する手段としての、戦争を禁止している。このため日本は自衛隊を海外に派遣することができない。しかし国連決議に基づく活動を支援する場合に限り特別措置法を定めて、期限を定めた非戦闘行為のみを担当してきた。

 ところが積極的派兵主義の安倍政権は「積極的平和主義」と言いつくろい、自衛隊の「国際戦争支援」を「国際平和支援法」にまるめて恒久法とし、国連決議を前提とせず、いつでも、どこでも、米国の戦争に奉仕しようとしている。国連決議のない戦争は、国連法違反でもある。

 米国の戦争に盲目的に加担することは無責任であり、国を亡ぼす。ベトナム、アフガン、イラク、リビアなどへの米軍介入は、ことごとく混乱を深めた。介入の口実が捏造であった例もあり、米軍がアフガンゲリラに与えた武器の一部はISに渡っている。

 第2次世界大戦後、欧米の植民地がつぎつぎと独立して国際政治が一変したのは、民族主義の力であった。軍事力によって他国の誇りや宗教を傷つければ、反発が大きい。 先日のテレビの画面で、ISを名乗る兵士たちが「民主主義は敵だ!」と叫んでいた。この人たちと共存するためには、敵でない民主主義を示す必要があるだろう。一方、世界有数の金融会社シティグループが、「富裕層にとっての脅威は民主主義」という極秘メモを作っていたと報じられた。理解には対話が必要だろう。そのなかで、共存する知恵が見つかるだろう。

 近年の軍事衝突はテロと内紛であり、国家間の戦争という形をとっていない。他国の介入は混乱を深め、介入した国にはテロが波及している。

 日本が戦争するべきでない理由はたくさんある。まず、国土の面積、軍事費、軍備、兵員数、人口、GDP、すべての面で米中に及ばない。東京という一極に人口が集中しすぎており、テロに対して無防備だ。原発もたくさんある。核兵器を持たないので、核兵器保有国には勝てるわけがない。

 そして日本が誇るべき弱点として、自衛隊員の多くは命がけで人を救うことができても、人を殺すことはできないだろう(感謝しています。涙)。サマワから帰還した自衛隊員が多数、自殺していることには心が痛む。

 チベット仏教界を代表するダライ・ラマ法王は4月4日、日本の医師に向けた講演会で、「道徳や倫理感が大切であり、争いではなく対話でなければ問題を解決することができない」と述べられた。深く記憶にとどめたい。戦争に反対する医師でありたいと思う。

(『東京保険医新聞』2015年6月5日号掲載)

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