【主張】日弁連『意見書』を踏まえて 指導・監査制度の改善を求める

公開日 2014年10月05日

 保険診療を行う保険医や保険医療機関には法律や規則を遵守し、医療保険制度が円滑に運用されるように行政による「個別指導」が、また「不正」や「著しい不当」が疑われる場合に指定の取り消しなど行政上の措置を前提に「監査」が行われる。

 個別指導ではあくまで「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし懇切丁寧に行う」(指導大綱)のであって、その趣旨から外れることは不当な行政指導であって許されない。しかし現実には指導医療官等による高圧的な態度や被指導者(保険医)の人格を否定するような発言が行われてきた経緯があり、個別指導や監査後に自殺者も出ている。

 このような個別指導のあり方について東京保険医協会(以下、東京協会)は個別指導時の密室性の解消を要望してきた。その内容は、1)行政手続法の趣旨に則ること、2)個別指導時に弁護士を保険医の隣席に着席させること、3)健康保険法73条2項の趣旨に則り東京協会に対しても個別指導時の立会人の依頼を行うこと、4)保険医から求めがあった場合には指導への選定理由を具体的に開示すること――である。

 前記以外にも多数の要求項目を毎年東京都福祉保健局へ請願してきたが、今年も9月4日に都庁内で実施した。今回の請願では、帯同弁護士の着席位置が相談や助言ができないほどの後方でなく、保険医の真後ろで話ができる距離に座ってもらうとの回答を得た。これは粘り強い運動の成果と言えるだろう。今後も弁護士は保険医の隣席に「立会い」として着席できるよう要望していきたい。

 このような状況にあるなか、朗報があった。8月22日に発表された日本弁護士連合会(日弁連)の「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」だ。個別指導を行う行政側からでなく、個別指導を受ける保険医側からでもない第三者的立場の司法団体から出されたことは大変意義のあることだ。

 日弁連は「意見書」のなかで7項目について改善、配慮及び検討を求めている。すなわち、1)選定理由の開示、2)個別指導対象とする診療録の事前指定、3)弁護士の個別指導への立会権、4)録音の権利性、5)患者調査に対する配慮、6)中断手続の適正な運用について、7)個別指導と監査の機関の分離及び苦情申立手続の確立――である。

 「意見書」は現状における問題点として「手続の不透明性」と「個別指導の密室性」をあげている。選定理由の不開示、個別指導の「中断」等の不透明な運用を例示し、「保険医等の適正な手続き的処遇を受ける権利(憲法13条)」の保障を求めている。

 また、個別指導時の「録音」と「弁護士帯同」については、保険医の申し出によって認められているだけで、権利として認められていないと指摘。「弁護士帯同」が認められても、相談や助言は認められず、離れた位置への着席を指示される等の実態を踏まえ、弁護士の「立会権」と個別指導の場の「録音・録画」が、保険医の権利として認められるべきだと述べている。その内容は東京協会が従来から要求してきた項目と共通するものが多い。この点から見ても、現在行われている個別指導が、法の番人たる弁護士の立場から見ても、不合理で矛盾の多いものであることがわかる。

 今後東京協会は日弁連と懇談の場を設け、意見交換を行うなどの活動を通じ、「指導・監査制度の改善」につなげられるよう運動を進めていきたい。

(『東京保険医新聞』2014年10月5日号掲載)