保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】風しん排除・CRS根絶のために

公開日 2013年11月15日

 今回の風しんの流行は2012年秋より始まり、発生数は減少していますが終息の見通しは立っていません。現在CDC(米国疾病予防管理センター)より勧告を受けている日本はオリンピック開催までに風しんを排除できるのか非常に危うい状況であることは明らかです。

 妊娠予備軍である女子中学生から、流行の担い手である男女幼児へ接種の対象を変更したことにより、日本の風しん報告数は大きく減少しました。しかし、その過程でワクチンを接種される機会が無かったり、接種率が低かったり、自然感染しなかったその当時の男子中学生が、現在成人男性として流行の中心を担っています。成人女子の場合にも接種率の低かった世代に風しん報告数が集中しています。

 対策としては、成人男性で大都会(首都圏と関西圏、できれば流行している鹿児島県を加える)の職場で一斉に臨時接種すれば、この流行は抑えられるでしょう。チリ・コスタリカの前例()があります。また、妊娠前(不妊治療者など)には、十分な免疫のあることの確認の奨励をし、免疫がない場合はワクチン接種をする、そして妊婦で感染の恐れがある場合には、胎児感染のウイルス遺伝子診断の実施など十分なカウンセリングが必要です。

 風しんの流行の翌年には多くのCRS(先天性風しん症候群)児が産まれてきてしまいます。CRSか否かの診断、出産後の両親、特に母親へのカウンセリングとCRS児の保育について、医療関係者はもとより行政にも学んでいただくことが急務です。CRSによる白内障・難聴は早期診断して早期治療することで学習やコミュニケーションの障害を最小限に抑え、将来の選択肢を広げてあげられます。

 ワクチン供給量が十分にある今こそ成人の接種費用を助成するなど、成人男性が容易に接種できる環境を整備することが国の取るべき行動と考えます。国が計画している抗体測定の奨励は学問的には正しいですが、そのために余計な経費と時間が掛かること、また、抗体があっても再感染が成人で約15%あることから、抗体を測定しないでワクチン接種することがより有効です。来年度からでは遅いのです。ワクチンは個人防衛としてだけでなく集団防衛という見地から必要です。風しんもCRSもワクチンで防げる疾患なのです。

 2004年にも風しんの流行がありました。現在の風しん問題は予防接種行政の不作為の結果と言えます。このままでは3度目の失敗となります。私たちが当事者意識を持ってワクチン接種を呼びかけていくことが今求められます。

チリでは2005年CRSが3例発生後、2007年に4000例の風しんが報告された。この際、チリ政府は19歳~29歳の男性を対象に一斉に予防接種を行い(接種率92・3%)、翌年以降の流行を阻止したという。またコスタリカでも1999年に15歳~39歳を中心に約1300例の風しん感染と30例のCRSが発生したが、2001年には当該年代に予防接種を行い(接種率80%以上)、その後の風しんの流行は見られなかった。

(『東京保険医新聞』2013年11月15日号掲載)