保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】地球上の全生物のために――原発汚染水・事故処理

公開日 2013年10月15日

 福島第一原発からの放射能漏れが危機的状況である。7月には地下水から高濃度の放射性物質が海に流出していることを指摘された。8月19日には120リットルの水溜りが、高濃度汚染水300トンの海洋流出の疑いに発展した。水溜りの空間放射線量は「毎時100ミリシーベルト」、2日間で50%の人が死亡する量に達する。タンク内のトリチウム濃度は二百数十万ベクレルだという。東電は翌日、流出を否定したが、21日には曖昧な発言に変わった。

 その後は7カ所以上のタンク周囲で、高濃度の放射線が検出されており、外洋に連なる排水路には高濃度のストロンチウムが確認されている。9月14日には原発敷地内の地下水から、17万ベクレル/リットルのβ線物質が検出された。

 東電によれば本年8月までに、最大10兆ベクレルのストロンチウム90、20兆ベクレルのセシウム137が地下水として港湾内に流出したという。原発建屋からは1日400トンの放射能汚染水がタンク群に移され、これまでの総量は34万トンに達した。これらのタンク群からの漏水が頻発して止められなくなっている。海に向かう排水溝からは高濃度の放射能が検出されている。

 ところが港湾内の海水の放射能は基準値を大幅に下回っているという。種明かしをすれば、港湾内の水は毎日半分ずつ外洋の水と入れ替わっているのだ。外洋汚染のことがすっぽりと抜け落ち、国際感覚が忘れられている。悲しむべき無責任さである。

 安倍首相は、9月7日のIOC総会で「状況はコントロールされている」「影響は港湾内0・3平方kmの範囲内で完全にブロックされている」「新聞ではなく、事実を見てほしい」と述べた。報道は間違いだ、という訳だ。しかし海外からの目は厳しい。

 独フランクフルターアルゲマイネ紙は8月6日、「東電は6月に外国人ジャーナリスト向け現地説明会で『原発事故は管理下にあり、全く危険はない』と言っていたが、汚染水が海に流出している。ウソをついては暴かれる東電は、何を学んできたのか」と嘆いた。

 米国ウォールストリートジャーナル紙は8月22日、「東電は冷却水を制御できなくなり、事故以来最悪の危機となっている」と報じた。同じく米国のネーション誌は「東電は最初に問題を否定し、対応が遅れ、あとから事実を認めて謝罪することを繰り返している」「現場の映像がほとんど提供されていない」と非難した。

 9月11日の東京新聞は、海外マスコミの意見を多数掲載した。概略は次のようになる。「原発事故は終息しておらず、健康が保障されない環境だ」=英国インディペンデント紙。「2年半前の事故で家に帰れない15万人を忘れた政府は、原発再稼働のことばかり考えている」「復興が進まない被災地にとって、東京に大金がつぎ込まれるのはよい知らせではないだろう」=英国BBC放送。「汚染水対策の500億円は東京五輪誘致のためだろう」「五輪開催は心理的な効果があっても、デフレ脱却につながるという期待は見当違いだ」=ロイター通信。「日本の指導者らは、放射能問題を否定するか誤解させている」=米国ニューヨークタイムズ。「汚染水問題があるのに東京で開催することは驚きだ」=独シュピーゲル紙。中国と韓国からも厳しい見方が寄せられている。

 9月16日からの国際原子力機関(IAEA)総会では、日本政府の釈明があったが、各国代表団からは「事態を見守りたい」という、冷ややかな声が漏れた。

 東京オリンピックは「原発事故処理」に道筋をつけられなければ、国際的な理解は得られないであろう。

 リニアモーターカーの工事や復興予算を流用した「国土強靭化事業」が、原発事故処理の足を引っ張ってはなるまい。日本中の人はもちろん、世界中の人が東京オリンピックを楽しめることを願いたい。地球上の全生物のためにも。

(『東京保険医新聞』2013年10月15日号掲載)