保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】社会保障改革プログラム法案 介護保険の改悪を許すな

公開日 2013年11月05日

 政府は、医療・介護・年金・保育などの社会保障制度全般を改悪するスケジュールおよび内容を示した「社会保障改革プログラム法案」を、10月15日に召集された臨時国会に提出した。実際の改悪は個別分野の法律を改定することにより実施される。

 介護分野の制度改悪は、医療に先行して2014年の通常国会に介護保険法「改正」案を提出し、第6期介護保険事業計画および介護報酬改定と時期を合わせて翌2015年4月から実施するスケジュールが組まれている。

 同法案に盛り込む具体的な改定内容の検討は「社会保障審議会介護保険部会」で8月から開始され、11月中に意見がまとめられることになっている。

 プログラム法案には、8月にまとめられた社会保障制度改革国民会議報告書に基づいて、1)「地域支援事業の見直しと併せた地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し」、2)「一定以上の所得を有する者の利用者負担の見直し」、3)「特別養護老人ホームに係る施設介護サービス費の支給対象の見直し」などの改悪項目が盛り込まれている。

 具体的には、1)は15年から3年間の第6期計画期間中に、要支援者への介護予防給付を段階的に廃止して市町村事業(介護保険制度の地域支援事業)に移行させるもので、移行後のサービスの種類・内容・基準・単価等は各区市町村が定めることになる。文字通り、区市町村任せの運用となり、要支援者向けのサービスに区市町村格差が生じることは目に見えている。さらに、生活支援サービスなどを民間企業に任せるという市場化・営利化が狙われている。同時に、ボランティアなどによって、後退した制度の穴埋めをさせようとしているが、介護支援は長期にわたるものであり、「地域の助け合い=互助」で支えきれるものではない。介護制度の後退は全般的なサービスの質・量を低下させ、「介護難民」をさらに増加させるだろう。

 2)は、一定以上の所得者の負担割合を現行の1割から2割に引き上げるものである。「一定以上の所得」の基準は、合計所得金額「160万円以上」と「170万円以上」の二つの案が示されている。「160万円以上」には、介護保険被保険者全体の約20%が該当するという。負担が2倍になると、サービス利用を制限せざるを得ない利用者も少なくないに違いない。

 健愛クリニック所長・増子忠道氏は近著の中で「2割負担の方式は、当面、高額所得者の利用料の引き上げから始まるという。だが、ゆくゆくはすべての利用者に広がるであろう。それは、医療保険のこれまでの歴史から見ても明らかである」(『やりなおし介護保険』より)と警鐘を鳴らしている。

 3)は、介護保険施設の一つである特別養護老人ホームへの入所対象者を要介護3以上に縮小し、要介護1、2を対象から除外するものである。そのまま実施されれば、施設入所が必要な要介護の認知症患者であっても軽度者は入所できなくなるなど、影響は大きく、認めるわけにはいかない。

 以上、主な改悪項目について述べたが、それですべてではない。政府は、地域包括ケアシステムの構築を旗印に、国民や現場の事業者に対して有無を言わさず制度改悪を強行しようとしている。さらに、介護保険制度改悪の実施時期が消費税10%への増税時期と重なることも見逃せない。また、改悪されるのは介護保険にとどまらない。医療をはじめ社会保障制度全般が「公助」「共助」から「自助・自立」に置き換えられようとしている。改悪されるのを黙って見過ごすわけにはいかない。

 われわれ保険医も、患者さんをはじめとする国民に向けて現在進行中の改悪プログラムの内容を広報し、改悪阻止の運動へ参加を呼びかけよう。

(『東京保険医新聞』2013年11月5日号掲載)